元気な工務店
既存住宅の外断熱改修に新たなニーズ

取材日:2023/05/30
江田建設(小樽市)
小樽市で60年近い歴史を刻み、現在は3代目の江田清三氏が社長を務める江田建設。高断熱高気密住宅の技術を追求し、新木造住宅技術研究協議会(新住協)をはじめ、ソトダン21やパッシブシステム研究会などさまざまな団体の活動に積極的に参加。大学や公的研究機関などとも連携しながら、暖かく健康的でエネルギーを無駄にしない家づくりを進化させてきた。「努力して学んだ知識がなければお客様を満足させることはできない」という江田社長に、現在の取組みを聞いた。
パッシブ換気住宅の実績は累計47棟
小樽市の丸甚江田組として1965年に創業。旧国鉄の土木工事や公共、民間の施設建築などとともに住宅建築にも長く携わってきた。90年代からは住宅を主事業とし、95年に現在の社名に。現社長の清三氏は3代目。その長男である清昭氏が専務として支えている。
現在、社長と専務の二人で営業と現場管理を担い、その他は社員大工2人、一人親方大工2人の職人のみという体制で、年間5~10棟の新築住宅を受注している。
ただ昨年は資材価格高騰の影響もあり、新築は4棟にとどまった。「道内の他の地域と同様、小樽の経済状況も非常に厳しい。以前は10人相談に来たら8割は契約につながっていたが、いまは予算的に難しい相談が増えている」と江田社長。厳しい市況の中で、「建ててくれるお客様と真摯に向き合い、求められる住宅を建てていく」という姿勢を貫く。
断熱改修の効果は
その一方で、増えているのが断熱改修工事の受注だ。既存外装材の上から付加断熱を行い、新たな通気層と外装材を施工する。この際、既存外装材を一部切り取り、窓交換や構造補強も併せて行うと、さらに費用対効果が高くなる。 改修費用は1000万円から1500万円ほど。解体費用を節約し、外装材には軽量で耐久性があり30年保証の樹脂サイディングを使うことによって、外壁を壊すスケルトン改修と比べると半分程度の費用で築古既存物件の断熱性能を劇的に向上させる。
北海道科学大名誉教授の福島明氏、アキレス(東京都)、ゼオン化成(同)、エクセルシャノン(同)と合同のワーキンググループで開発した工法で、2年前に自社の社屋で実証施工を行い、築30年の建物のUA値が0.4から0.29(W/㎡K)まで改善された。
年間の暖房に消費する灯油の量は改修前と比べて32.37%削減。給湯ボイラーの灯油消費量も計算に入れると、さらに削減効果は高いという。

外断熱改修を行った江田建設の社屋
リフォームで資産価値向上
同社はOB顧客などから外壁改修の相談があると、この実証成果を基に外断熱改修を提案。これまでに10件を受注している。
ただ外装材を張り換えるだけより300万円ほど費用は追加になるが、暖房費が大幅に削減され、何よりその後はずっと暖かく健康的な環境に住み続けることができる。
江田社長は「築30年でリフォームして、あとは一生暮らせる家、60年経ってもきちんと資産価値が残る家ということをお客様に説明して、理解してもらっている」と言う。

高い性能とデザイン性が融合した新築住宅
省エネ住宅に特化
同社は16年前からNPO法人パッシブシステム研究会に入会し、これまでに累計47棟のパッシブ換気住宅を手掛けている。 パッシブ換気は地中埋設管(アースチューブ)を通して取り込んだ外気を床下に設置した暖房機で温め、上昇気流によって全館に循環させ、汚れた空気を最上部から排出する仕組み。
「他社と差別化するためではなく、エネルギーを無駄にしない健康的な家づくりに特化するためにパッシブ換気に取り組んでいる」と語る江田社長。同会は技術研究のための団体であり、道内の大学や公的研究機関のさまざまな研究者の協力によって実証試験やデータの蓄積が行われている。「その成果を学び、一般ユーザーに還元するのが会員である自分たち住宅会社の役割。ただ家を売るためのフランチャイズとは性格が異なる」と強調する。
18年の胆振東部地震で大規模停電が発生した時、「真っ暗で設備がすべて止まっている中、排気口を懐中電灯で照らすとちゃんと換気しているのが分かり、パッシブ換気にしてよかった」と喜ぶオーナーの話を聞いて、改めてその価値を実感したという。
「次の目標はパッシブ改修。いまワーキンググループで取り組んでいる」と新たな挑戦にも意欲的。「オープン工法なので多くの人に使ってもらい、さらに発展させて次世代に引き継いでいきたい」と語る。

快適なパッシブ換気システム