住まいの話題
国産畳表の価値を知る① 品質は退色と耐久性に表れる

取材日:2024/09/15
熊本県藺製品卸商業協同組合 代表理事 松永賢一氏
畳に価格差があるとき、価値としてどのくらいの違いがあるのか。その見分け方と顧客への提案方法を学ぶ「畳表提案力アップ研修会」が、8月30日に札幌市産業振興センター(札幌市白石区東札幌5条1丁目)で開かれた。主催は、いぐさ・畳表生産者と畳製造者をつなぐ全国い産業連携協議会。
研修会には、道内の畳店をはじめ工務店や設計事務所などから24人が参加した。第1部のテーマは「畳表の見分け方」。講師を務めた松永氏は、冒頭で3種類のいぐさで織られた一枚の畳表を見せ、「研修が終わる頃には見分けができるようになる」と鼓舞した。
国産品は熊本県産
畳表は畳の表面に使われる織物で、いぐさの生産地で織られて全国へ送られる。この畳表を材料にして、畳職人が畳をしつらえる。 国産いぐさの畳表の90%以上は熊本県産。室町時代から県内で生産が始まり、八代地方を中心に一大生産拠点として発展してきた。しかし近年、日本人の生活スタイルの変化や低価格の中国産に押されるなどにより、厳しい状況が続いているという。
農家戸数は、1989年の5460戸から24年は266戸に激減。市場シェアも中国産いぐさや化学繊維による畳表が約80%を占め、国産は約20%に留まる。 国産いぐさ畳の需要を喚起するため、松永氏は「価値の違いが買い手によく伝わる知識の習得が必要」と強調した。

3種類のいぐさで織られた畳表の見本
芽の出方を理解
価値の違いは、「退色と耐久性にある」と松永氏。最初は同じように見えても、時間の経過とともに美しさや丈夫さに差が現れてくる。上質な畳表は10年以上経っても皮むけや黒筋がない。
ポイントは「芽の出方」で、同じいぐさでも長さによって品質の異なる畳表ができるが、その理由をいぐさの栽培方法から解説した。 いぐさは4月に先刈りといって、古い芽の先端をカットすることで新しい芽の伸長を促す。一番長く伸びた新芽だけで織ったものが最も良いとされる。
見分け方のポイントは、畳表に織られたいぐさの色や径が揃っているかどうか。古芽は太くて茶色っぽく、新芽は細く白っぽい。色や径が揃っているものは、線が真っ直ぐで表面もなめらかになる。 また先端部分の跳ね返りが強く、表面にツヤのある方が耐久性に優れる。松永氏は、「ツヤは分かりづらいが、良いものをたくさん見ると分かるようになる」と言い添えた。
顧客への提案については、「最高級品を見本に入れる」「日焼けしたサンプルを用意する」などを挙げた。品質の差が一目瞭然で分かるが、なぜ差ができるのかを説明できることが大切になる。 熊本県の産地では研修を行っており、いぐさの刈り取り体験や畳表の織り体験ができる。「実際の体験から話すことは伝わりやすい」と、松永氏は産地への訪問を呼びかけた。