ZEHの規格住宅を
今後について小山内氏は、「これまで規格住宅はやっていなかったが、ZEHが成立することが分かったので、25~30坪以内で建物の目標価格2500万円前後のZEHの規格を作ろうと考えている」と話す。当初のプランよりも、ウッドショックによって2年ほどずれてしまったが、今年中にはZEHのモデルハウス建設を計画しているという。 「宿泊体験や厳寒期の暖房効率などを体感できるモデルハウスにしたい」と語り、ZEHの普及に意欲をみせた。
取材日:2023/06/15
小山内建設(宗谷管内猿払村)
小山内建設のルーツは1926年にまで遡る。征葺き工事を行う小山内組として創業。78年に法人化し、現在の小山内建設となった。現社長の小山内浩一氏は4代目。北海道工業大(現・北海道科学大)の建築科で学び、空知管内の建築会社を経て札幌の大手ゼネコンに入社。全道各地の大型建築の現場監督として経験を積んだという。結婚と子育てを機に猿払村にUターン。猿払村を中心に宗谷管内で、北方型住宅ECO、Q1.0-X(キューワン・エックス)住宅や200〜300㎜断熱住宅、近年ではZEHと、高性能住宅を作り続けている。
会社を継ぐまで主にRC建築に携わってきた小山内氏は、木造住宅について学ぶため(一社)新木造住宅技術研究協議会(新住協)に加入。「当時室蘭工業大助教授だった鎌田紀彦先生が断熱材200㎜、300㎜という高断熱住宅に取り組んでいた」と振り返る。当時からQ値として、住宅の性能をきちんと数字化してユーザーに提案できることに感銘を受け、「Q1.0住宅を会社の標準としてやっていこうと決めた」と話す。
耐用年数30年ほどでスクラップアンドビルドする木造住宅業界に小山内氏は疑問を持った。その頃、環境問題への関心の高まりや、住宅の長寿命化に向けた国の政策もあり、100年住宅を目指そうという取組みが活発になり始めていた。
また、長期優良住宅の補助金も追い風になった。「ユーザーにとっては補助金のあるなしは大きい。たしかにイニシャルコストはかかるが、しっかりとした家は長い目で見てユーザーの利益になる」と強調した。
小山内建設 社屋
小山内氏はユーザーに「コスト削減のために性能を下げることはしないと最初に説明する」と語る。これまでの施工事例も、UA値が0.3以上、C値が0.5以上になることはなかったという。
同社の仕様は、基礎外側には押出法ポリスチレンフォーム断熱材3種bを100㎜、内側は同75㎜。土間下は同2種bを50㎜、スカート断熱同50㎜。軸間に高性能グラスウール16Kを105㎜、付加断熱に同105㎜。天井断熱に吹き込みグラスウール350㎜。サッシはすべてトリプルガラス樹脂サッシを使用。
また、地域型住宅グリーン化事業に参加し、現在も土台には道産カラマツ集成材、柱には道産青木集成材を使用し、道産木材を100%使用しているという。「プレカット工場にも、うちのものはできる限り道産材を使ってもらうよう頼んでいる」と小山内氏は明かす。
明るく開放的な室内
換気はダクト式第1種換気。ユーザーの要望によってはダクトレスも使用するというが、猿払村では2種や3種換気は難しいためという。強風の多い猿払の環境では、3種では吹き込む風で余計に吸気してしまい、室温の低下や吸気口での結露が問題になることがある。2種では風が排気を逆流させる。地域環境によって最善の方法は異なることを示している。
2021年に同社初となるZEH仕様の住宅を建設。ここにも地域環境の特徴が現れた。
給湯と暖房には灯油熱源を採用。一般にZEH仕様では電気式の暖房給湯を用いるイメージがあるが、「貯湯タンクなどの設置コストなどを加味して比較すると、灯油の方がイニシャルコストが抑えられる」ため有利だと小山内氏は言う。
また、猿払村の年間の日射地域区分は2で、札幌(同3)や函館(3)よりも日照条件は悪い。小山内氏も実際に発電する量に関しては、事前に見込みがあったわけではないと話す。2021年に完成したZEH住宅には10kWの太陽光発電パネルが載り、継続的に発電量をモニターさせてもらっているという。
22年の年間データを見せてもらうと、月別発電量は1月、2月、12月はゼロ。ところが、3~11月の9か月間だけで年間電力消費量の約110%を発電していることが分かった。通年で見ると、積雪によって無発電の期間を、その他の期間で埋め合わせることができている。この結果に小山内氏は「やってみて驚いた。猿払でも創エネはできると分かった」と力を込めた。
ZEH仕様の住宅
今後について小山内氏は、「これまで規格住宅はやっていなかったが、ZEHが成立することが分かったので、25~30坪以内で建物の目標価格2500万円前後のZEHの規格を作ろうと考えている」と話す。当初のプランよりも、ウッドショックによって2年ほどずれてしまったが、今年中にはZEHのモデルハウス建設を計画しているという。 「宿泊体験や厳寒期の暖房効率などを体感できるモデルハウスにしたい」と語り、ZEHの普及に意欲をみせた。