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武部建設が土壁ワークショップ

武部建設(岩見沢市)はこのほど、同社三笠事務所の作業場に左官職人の野田肇介氏を講師として招き、土壁塗りのワークショップを開いた。同社や協力業者の社員、建築科の学生など18人が参加し、昔ながらの土壁の技法を学んだ。
野田氏は左官職人の父親の元でキャリアをスタートし、伝統建築やアートの分野でも注目を集める著名な左官職人・久住有生氏に師事した後、地元の日高管内浦河町で土壁の仕事に取り組んでいる。

この日は作業場に用意した3種類の土をこねる作業から開始。築120年の古民家の土壁を解体し、再利用した土とレンガを焼くための江別産の土、砂利の残渣物として出た泥を乾燥させた土に、それぞれ水と稲わらを混ぜ、均一に練り上げた。
塗り作業は3回。下地となる「荒壁」はしっかりと厚く塗り、乾燥させたら「中塗り」で表面を滑らかにし、最後に漆喰で仕上げる。このワークショップでは、まず木ずりや合板の下地に3種類の土を荒壁として塗り、塗りやすさや乾燥までの時間を検証した。
乾燥時間は塗りの厚さや天候などの条件によって異なるが、荒壁が乾くまでに3日から一週間ほど。さらに中塗りで2、3日、仕上げで2、3日。武部豊樹社長は同社の住宅に土壁の仕様を取り入れる考えで、乾燥時間による工期の調整には工夫が必要だという。
「高断熱・高気密住宅の次の目標として土壁の調湿性や蓄熱性に注目し、現在の住宅技術と組み合わせて生かしていきたい」と語り、設備による省エネ化だけでなく、工務店ならではの職人の技術で躯体の機能性を追求する。「野田さんの土壁はテクスチャーも素晴らしく、現代に合った土の使い方を見せられると思う」。今後は室内側に土壁を塗った外壁の軸組をモデルに温度や湿度を測定し、実用に向けた検証を行う。
野田氏は「土壁はすべて自然素材。夏の暑熱対策としても、土が持つ自然の調湿性の気持ちよさが見直されている」と話し、武部建設や地域の職人とともに土壁の普及と技術の継承に注力する。