ものづくりする人

未来のためのオフグリッドハウス

太陽光と地中熱で

栗山町の丘陵地に建つHATOYAMA HOUSEは、延床面積165.62㎡の平屋のオール電化住宅。元々は07年に古野氏自ら設計・施工したモデルハウス兼事務所だった。これを約1年かけて改修したといい、まず着手したのは要となる太陽光発電システムだった。発電量9.94kWのシャープ製ソーラーパネルを建物の裏手に地上設置(野立て)した。雪が積もる冬期間の発電を考慮し、パネル上の雪下ろしができるよう後ろに足場も組み立てた。これにV2Hをつなぎ、マイカーとして乗っているEVの日産リーフを蓄電池として利用。さらにリーフで外出する時のために9kWの置き型蓄電池も備えた。

続いて断熱改修を行った。軸間に100㎜のグラスウールを充填していたが、一部の室内側に45㎜のスタイロフォームを付加した。窓はトリプルガラスの木製サッシを採用。UA値は0.34で十分に暖かい。仕上げは地中熱ヒートポンプの導入。厳寒期でも消費電力を抑えられ、夏は室内の熱を地中に戻しながら、外気温より低い地温を生かして冷房として活用できる。

暖房と冷房は、ピーエス(東京都)の除湿型放射冷暖房機をダイニングに1基設置した。ラジエーターの中に水を循環させ、放射と自然対流により空間全体を安定した温度にするもので、デザイン性も高い。また、ゲストルームなど一部に床暖房を敷設。玄関土間にも冷暖房用のパイピングを施した。リビングには薪ストーブを設置している。

 

HATOYAMA HOUSEを望む

9.94kWの太陽光発電パネルを設置

EVとV2Hをつなぐ

 

 

データで検証する

古野氏は、発電量(kWh)、売電量(円)、買電量(円)のデータを取得し、自身のインスタグラムで毎月発表している。 24年のデータをみると、年間の発電量は1万2537kWh、売電量は5320kWhで8万8910円、買電量は1165kWhで6万7686円。収支は約2万円のプラスだった。5月と7月は1万円以上プラスになったが、やはり11月から2月は雪が降ったり、日が短かったりするためマイナスになる。 「データから色々なことが分かってくる」と古野氏。

例えば、意外にも3月の発電量が1年のうちで最も多かった。晴れた日が多く、地面の雪の反射光も影響しており、北国ならではの現象と言える。現在は北方建築総合研究所(北総研)が「EVと家」をテーマにした研究のため、定期的にデータを取りに来るそうだ。 「年間を通せば北海道は夏の日射が多く、梅雨がないから収支をプラスにできる」と古野氏は話し、「ただ、目指しているのは1日単位で電気を買わないことなので、今の状況に甘んじることなく本当のオフグリッドにしたい」と強調した。

 

発電量をチェック

宿泊体験で普及へ

HATOYAMA HOUSEは、1棟貸しの宿として宿泊ができる。そこにはオフグリッドの家で、普通の暮らしができることを多くの人に実感してほしいという想いがある。

専用のWebサイトも立ち上げ、「オフグリッドハウスのリアルを感じてみませんか」と呼びかけている。EVで来る人には割引の特典を付けた。また、宿泊料金の25%を気候変動に関する報道を支援する(一社)メディア イズ ホープ(東京都)に寄付している。今のところ1ヵ月に1〜2組の利用があるが、ほとんどが観光目的だ。一般の人のオフグリッドへの反応はまだ薄いと見るが、それでも「温暖化対策をしたいという人は、徐々に増えていると思う」と期待する。

工務店や建築家も見学に訪れる。その都度説明し、希望があればデータもすべて渡す。「この家が世界のスタンダードになればという思いで取り組んでいる」と、これからも検証とアップデートを続けていくと語った。

 

オフグリッドで快適な暮らし