グループ活動

《インタビュー》北海道次世代の会 櫻井百子会長

世代も職種も超えたつながり

北海道次世代の会は、設計事務所や工務店、メーカー、研究者、学生など幅広い分野の人たちが集まり、住宅をはじめ建築についてさまざまな体験や学びを行なっている。建築に携わる若い世代が自由に意見を交わし、上の世代とも気兼ねなく言い合える場を目指してきたという。同会の櫻井会長(一級建築士事務所アトリエmomo主宰、札幌市)に話を聞いた。

北海道の建築文化を大切に

縛られずに自由に

北海道次世代の会について、櫻井氏は「部活のようなもの」と笑う。規約や難しいルールは一切なく、会費も例会の参加費のみ。誰が会員ということもなく、一度参加した人を名簿に加えていく。参加者の職種を区切らず、設計事務所、工務店、メーカー、研究者、学生など、建築に興味のある人なら誰でも歓迎する。エリアも限らず、道外の人も名簿に連なっている。 「次世代の会と名乗っている以上、若い人たちにどんどん参加してほしい」と話し、「皆さんが好きなこと、やりたいことをしていければいいと思っている」と緩やかだ。

主な活動は3ヵ月に1度の定例会。その都度、顔ぶれは変わるが大体30名ほどの参加がある。内容は新築住宅の現場見学から有名建築訪問、木材の産地めぐりまでさまざま。道内各地をはじめ道外まで出かけていく。国産材の可能性を秘めた屋久杉を見に行く3泊4日の屋久島ツアーを行ったこともある。

毎回、櫻井氏をはじめとするコアメンバーが相談して決めるが、参加者に「何かしたいことがあるか」を聞いて、それを取り上げるのだという。また、建築現場は、どの物件が今どれくらい進んでいるのか常に情報共有しながら選んでいる。「誰かからの押し付けではなく、自分たちがしたいことをやってきたからこんなに楽しく続いていると思う」と櫻井氏は語る。

 

家づくりの現場を見学

始まりは南幌PJ

設立のきっかけは、「南幌町みどり野きた住まいるヴィレッジ」だった。環境に優しい家を普及させるプロジェクトで、道と南幌町が共同で2016年にスタート。当初、6組の建築家と工務店のコラボレーションによるモデルハウスが建設された。

そこでタッグを組んだATELIERO2(札幌市)の大杉崇社長とリノア(同)の松澤総志社長、マツナガ(東京都)の松永潤一郎社長、アドバイザーの北大大学院工学研究院の菊田弘輝准教授の4人が意気投合。建築について「若い人たちで勉強会をしよう」と、同プロジェクトに参加していた櫻井氏をはじめ、周囲に呼びかけたのが始まりだった。

2017年の第一回例会からこれまで、業種や世代を超えたつながりが育まれてきた。「それぞれの立場でフラットに何でも言いあえる」から、日頃の業務でも声を掛けあったり、困ったときに助けあったりする関係にある。櫻井氏は、「資材の高騰や職人さんが足りないなど大変な時代だけど、みんなで知恵を出して乗り切って行こうという思いでやっている」と力を込めた。

また、「最初は自分たちが建築業界の中では若かったから次世代と名付けたのだけれど、今は次の世代を育てる時期にきている」といい、若手建築家や工務店の後継者、メーカーの第一線にいる社員、学生たちなどを応援し、彼らが活躍する会でありたいと話した。

一方で北海道は断熱気密の技術で日本の住宅の最先端にいる。それは、「先人の方々が挑戦して失敗して、また挑戦することを繰り返してきたから」と櫻井氏は強調する。それだけでなく、産官学が一体となり、知り得た情報や経験を包み隠さずみんなで共有してきた。

「そんな北海道の文化を大切にしたい。会の名称に北海道が付いているのはいいことだと思う」。北海道の建築文化を次世代に繋げていくことも会の目指す方向にある。

体験と学びを共有

屋久島ツアーは昨年の11月から12月にかけて行われた。同会の常連メンバーで、屋久島地杉のデッキ材や外壁材、フローリングなどを製品化しているチャネルオリジナル(横浜市)北海道エリア担当の中上景一郎氏が取りまとめた。 櫻井氏は日頃から屋久島地杉をウッドデッキや玄関ポーチなどに使っていたが、「どんな環境でどんな風に加工されているか知りたい。現場の人の声も聞きたかった」という。

実際に行ってみて、屋久杉が「腐らない木の代名詞」と言われている理由が実感できた。あれだけ降水量の多い中で育つため樹脂が多く、耐水性が高くなるのだ。そういう材を適材適所でエクステリアに使うのだから、顧客に対する説明にも説得力が増す。

こうした体験ができるのも同会ならではだろう。「仲間がいると学びも深まる」といい、体験したことについてお互いに話し合ったり、仕事に生かせたりする。これまで参加した学生たちも、大学を卒業して建築関連の会社に就職している。「そのうちまた仕事で会うことがある。それも楽しみと思っている」。次世代のつながりは緩やかに広がっている。

 

北海道次世代の会

発表会や研修も行う