元気な工務店
施主と大工の信頼関係を現場で
取材日:2022/05/30
笹木産業(滝川市)
住みたい場所に住みたい家を建てる
笹木産業(滝川市)は、地域に根付いた老舗の工務店。顧客は口コミでつながり、コロナ禍においても安定的な新築棟数を確保している。現場での臨機応変な施工対応や地元ならではの土地の情報収集など、地場の強みを生かした家づくりについて関尾行弘取締役営業部長に話を聞いた。
可変性のある家を
笹木産業は1950年に土木建築請負業で創業。空知エリアから苫小牧市、札幌市まで、年間10棟以上の新築注文住宅を建築し、宅地開発も手がける老舗工務店だ。2×4工法を採用し、自社大工を抱えて安定した施工を心がけている。
関尾氏が入社した25年以上前はスクラップアンドビルドの時代だった。状況は大きく変わり、今はストック型を目指す社会。そのため、「お客様の現状と将来の両方において満足できる可変性のある家づくりを行っている」と話す。
顧客のほとんどは子育て世帯。滝川市は結婚したら戸建に住むのが一般的という。子供の頃から持ち家で暮らしてきた人が多い背景がある。また、賃貸の家賃が高く、比べて土地が安いため家賃並みのローン支払いで一戸建を持てる実情もある。
建てた施主の口コミから次の仕事につながることが多いが、完成見学会を年3回コンスタントに行い、新規の顧客にアピールする。
仕事をつなげていく
施主とのコミュニケーションは密接で、建築現場は必ず見てもらうそうだ。コンセントの配置を現場で決めてもらうほか、ニッチや収納棚の位置や形状なども建築中に確認できるよう時間を設ける。キッチンの高さも施主と一緒に調節する。「図面上で決めて、大工に発注して終わりではない」と関尾氏は話し、「図面だけでは、施主は高さなどなかなかイメージできない。現場で確認して調整することでその人だけの使い勝手の良いものに仕上がる」とあくまで現場にこだわる。
現場を見たいが邪魔になるのではと考える施主は少なくなく、機会を設けると喜ばれるそうだ。自分の家にこれだけ多くの人が関わって作り上げていくと分かると、ありがたく嬉しいという気持ちが生まれる。大工との間に信頼関係が育まれ、建てた後に何かあればすぐ声をかけてくれるようになる。
将来的には子供が独立した後に、夫婦で住みやすい家へリフォームする時にも依頼してくれる。その子供が結婚を機に新築するかもしれない。そうして仕事がつながっていく。
土地情報の蓄積を
自社に不動産の窓口があり、土地に対する優位性を持っていることも同社の強みの一つだ。
「営業担当は春先になると近隣で更地を探し、地主にあたることを継続して行っている」と関尾氏。長年に渡って先輩が築いてきた地主との信頼を後輩が受け継ぎ、さらに毎年新しく開拓していく。そうして蓄積された土地の情報が財産になっているという。
「情報を元に営業一人ひとりが自分の目で現地を確かめ売買することで、お客様のためにより良い土地を安く提案できる」。住みたい場所に住みたい家を建てることが同社の基本にある。
宅地分譲地の販売も行っている。現在は滝川市内で7区画(残2区画)のほか、苫小牧市で13区画(残6区画)の分譲地を提供している。昨年は建売形式での提供も行い、順調に売れたという。
今後の展望について、関尾氏は、「資材高騰の中で、いかにお客様の資金計画に沿った提案ができるか」を第一に考えていくとする。土地と建物を一体で提案できることが資金に融通を効かせることにつながる。また、コロナ禍の生活スタイルに応じた新しいプランも模索している。「住みたい家」の提案に終わりはない。