元気な工務店
全棟ZEHで快適な暮らしを提案
取材日:2022/06/30
森栄建設(深川市)
森栄建設(深川市)は、2021年度に全棟ZEHを実現し、環境負荷を低減したアパートの建設も行う。実証ベースの施工と工夫を凝らした提案を行い、顧客から厚い信頼を寄せられる。先を見据えた先進的な取組みについて森下幹生代表取締役社長に話を聞いた。
実装を伴った工夫を
2015年にリノベーションした森栄建設の社屋には実験的な取組みが詰め込まれている。
さまざまな素材とカラーの外壁材で外観が彩られ、屋根一面に42枚の太陽光パネルを設置。44年ほど前の既存断熱はそのままに遮熱材を施し、暖房システムは水平採熱方式の地中熱ヒートポンプを採用する。
一風変わった建築だが、すべて同社が顧客の住宅づくりに使用している部材や設備だ。そのため、打ち合わせに訪れる顧客にとっては、これから建てる家を体感できる場となる。
森下社長は「常に新たな商品が出るが、実証を伴った工夫がお客様の快適な暮らしを実現する」と話す。工夫を凝らす精神は、先代から引き継いでいる。
先代から引き継ぐ精神
森栄建設は73年に創業した。「一年中外気温に左右されず快適に過ごすことができる高性能な住宅づくり」を合言葉に、地域に密着し顧客に寄り添ってきた。 創業当時はせんべい布団のような断熱材だったそうだが、50㎜のグラスウールを二重にして壁内に充填し、その上から垂木を打って50㎜を上乗せするなど工夫を施し、あたたかい家づくりを目指した。
森下社長は「図面が残っていないため、先代が手掛けた家のリフォームは一苦労」と笑うが、「新しい技術を導入する際には、自宅や事務所を実験場として研究を重ねている」と言うように、顧客の快適な暮らしのために探求する姿は、先代から受け継ぐものだ。
社屋と自邸が実験場
リノベーションした同社社屋は、既存のモルタル壁とグラスウールは一部を除いてそのまま。既存部には20㎜厚のニューハウスボードを付加断熱し、増築部には61㎜厚のキューワンボードを施工。そして遮熱材リフレクティックスで内装全面を覆っている。「断熱診断システム(JJJ断熱診断)によると、既存部でグラスウール300㎜相当の数値が出た」と森下社長。
社屋の裏側にある自邸では、換気について実証を重ねた。さまざまな熱交換換気システムを導入して温度計測を行い、熱交換効率を実測。その結果、必ずしも高価で多機能なシステムほど高い効果が得られたわけではなく、「換気はシンプルな方がいい」という結論に。現在は自然対流で空気を循環させるから屋(札幌市)の二種換気システムを採用している。
自邸や社屋で実証しきれないまま新しく導入する設備については、下調べを行い、従来の設備との差額を自社で負担し顧客に提案している。結果的に、顧客は良い設備を割安で利用できる。
次々と新たな商品が発売されるが「時代が移り変わる中、先を見据えて可変性を持たせながら取組んでいる」と森下社長。
ZEHビルダー6つ星
先を見据えた取り組みとして、同社では14年ほど前から太陽光パネルの搭載を始めた。21年度は全棟でZEHを実現し、ZEHビルダー評価制度で最高ランク6つ星に認定された。
昨今、電気料金が高騰する中、「電気を買わない生活の価値は高い。創エネシステムと蓄電池を備えることが今後の標準になるのでは」と森下社長。
しかし、太陽光パネルの初期費用が高いと導入は進まない。同社では、仕入れ業者を選定し自社で施工することで、太陽光パネルの費用を抑えている。
EHの取組みは戸建だけではない。16年には軸間に硬質ウレタンフォーム80㎜を充填し、キューワンボード61㎜厚を付加断熱したUA値0.25W/㎡kのアパートを社屋の前に建設。14kW/hの太陽光パネルを搭載し、全国で初めて水平採熱方式の地中熱ヒートポンプを民間賃貸アパートに採用。ZEH―Mの制度がまだない当時に環境負荷の少ない高性能なアパートを建設した。
今年3月には、家賃に電気代を含んだオール電化賃貸住宅が深川市西町に竣工し内覧会を行った。3LDKが6戸で、壁面と屋根に合計55.12kW/hの太陽光パネルを搭載する。
探求は終わらない
国の省エネ計算プログラムでは、遮熱材や地中熱ヒートポンプは評価されないためZEH基準を満たすことは難しいが、現場で測定すると基準を遥かに超えた数値が出るという。「補助金などによりフルZEHが必要な時は、プログラムの計算に有利な設備を使うが、資材や設備によって可能性が広がる」と森下社長。
体験が伴う実証ベースの施工と先進的な取組みを続けてきた同社だが、森下社長は「まだまだ探求は終わらない」と話す。
顧客の快適な暮らしを実現するのに制限された枠はない。二代にわたる探求精神は、深川の地でこれからも顧客の暮らしを支えていく。