住まいの話題
武部建設が厚真町で古民家再生
取材日:2023/08/15
武部建設
胆振管内厚真町は7月23日、武部建設(岩見沢市)が移築再生工事を担当した「旧幅田邸古民家完成見学会」を開催した。対象は町民で、当日は旧幅田邸の親族も訪れた。完成した古民家は「森厚真HOTEL CHUPKI(チュプキ)」として、8月8日に開業した。
厚真町は2021年9月にDBO方式(公共施設等の設計、建設、維持管理・運営等を民間事業者に一括して委託するデザイン・ビルド・オペレーション)により、公募型プロポーザルを実施。アトリエアク(札幌市)が設計、武部建設は施工、維持管理・運営はクーバル(大阪市)が行う共同企業体を事業者に選定した。解体工事を経て、昨年9月から今年2月まで移築再生工事を行い、3月に厚真町に引き渡された。
所在地は厚真町字豊沢244番1の内で、豊沢地区の環境保全林の中にある自然豊かな環境。敷地面積が約2700㎡、建築面積は約310㎡。平屋で、母屋と渡り廊下でつながれた離れがある。
羽深久夫名誉教授が解説
見学会では、最初に札幌市立大の羽深久夫名誉教授が「旧幅田邸・厚真町の古民家について〜歴史背景や住宅様式など」と題して講演。羽深氏は2009年から厚真町に残る古民家を調査してきた。2015年には厚真町と協定を結び、古民家の利活用についてサポートを行っている。
旧幅田邸は富山県の民家にみられる伝統工法「枠の内」が用いられ、広間は太い梁で頑丈に組み上げられている。明治時代、1894年に富山県からこの地に入植した幅田家当主が1901年に建築した住宅で、約120年前の建物だ。
その後、23年に離れが造られ、53年から54年にかけて改築を行い、建物を90度回転させた。さらに56年から57年に2階が増築されたが、今回の工事では54年の平屋当時にさかのぼって再生された。
冬をいかに快適に暮らせるか
続いて、武部建設の武部豊樹社長が施工について解説した。武部建設は道内各地で古民家再生に取り組み、厚真町では民間が2棟、公共は3棟の実績がある。北海道の民家は本州と違い、開拓者の故郷にならったさまざまな地域の建物があったが、それらは夏を旨とした伝統的な造りだった。そのため、北海道の厳しい気候の中で、「寒い、暗い、不便」な民家はほとんど残らなかった。「残すためには不満を解消し、冬をいかに快適に暮らせるかが重要」と武部氏。再生工事にあたっては、断熱、気密、換気の住性能向上に配慮したまた、技術のある職人の不足と金銭的に維持できるかが課題とし、「民家を残すことに理解を得て、一般化していかなければならない」と参加者に呼びかけた。
最後に、クーバル北海道支店の川上泰央支店長が施設の運営について説明。ホテルは3室でレストランを併設し、宿泊だけでなく飲食も強化する方針だ。川上氏は開業後のホテルの支配人を務め、「開拓時代の文化を繋いでいくようなホテルにしていきたい」と意気込みを語った。
厚真町は10年前から古民家移築再生事業を始め、これまでベーカリーを開業した旧畑島邸、飲食と民泊を行う旧山口邸の二つの古民家を整備してきた。今後も計画中の古民家があり、事業を継続していくという。