北方型住宅のこと

《第2回》ゼロカーボンヴィレッジ対談:性能とデザイン、良いとこ取りを

地域工務店と建築家が協働グループを組んで北方型住宅ZEROの住まいづくりを行う空知管内南幌町の「みどり野ゼロカーボンヴィレッジ」。現在11グループの基本プランが公開され、オーナーを募集中だ。工務店と建築家がどのような考えでこのプロジェクトに参加し、どのように協働していったのか、対談形式で内幕を聞くシリーズ。

第2回は奥野工務店(札幌市)社長の狩野泰孝氏と山下竜二建築設計事務所.(渡島管内森町)代表の山下竜二氏。ロフト付の二つの「子どもの家」、LDKによる「みんなの家」、その三つの家に囲まれた「余白の間」。子育て世帯を想定し、住人の個性が引き立つようにと設計されたユニークな住宅は、どう生まれたのか。二人のベースにある将来にわたって顧客のためになる家づくりとは。

住む人が主役の家

外観と平面プラン

山下 私は「住む人が主役になる家」を大事にしているのですが、今回は施主が決まっていない状況だったので、どんな使い方もできる余白のスペースを設けたいと考えました。それがこの余白の間です。 大開口で屋外のような空間に仕立て、いろいろな趣味を楽しめるように大きな棚を作りました。ここを囲んで三つの家を配置しています。

狩野 初めてこのプランを見たとき、毛綱毅曠(もづなきこう、建築家、2001年没)の「反住器」を思い出しました。建物の中に箱があるのが面白いなと。実際の施工は大変そうですが(笑)、楽しみながら建てられると思います。

山下 子どもの家は、向かい合っていたら楽しいんじゃないかなと思って。どちらもロフトから顔を出せるんですけど、そこから兄弟が向かい合って紙飛行機を飛ばしたりとか(笑)。

狩野 うちは自社設計が基本ですが、性能重視で正直デザインはかっこよくないというのがあります。今回のコラボレーションをきっかけに、今後もうちの施工で建築家に依頼したいなら山下先生ですよとアピールできたらいいなと思っています。

初めてのパッシブ

山下 今まで太陽光発電はあまり積極的でなかったのですが、今回は真剣に取り組んで、自分なりに納得のいくものになりました。

狩野 お互いの中で、まず屋根に乗せるのは止めようという共通認識がありました。積雪で発電しなくなるし、パネルが割れるなどメンテナンス面でのリスクも高いですし。

山下 そこで壁面だけの設置を考えました。といっても壁面から少し飛び出してつけることでメンテナンスをしやすくしています。外観に紛れ込ませるようにして、違和感のないデザインを心がけました。6枚のパネルで、容量は合計2kW程度です。
併せて、太陽光発電連動型のヒートポンプ給湯器を採用しました。電気をお湯に変換して貯められるシステムなので、昼間は家にいない人でも有効に使えます。

狩野 あと、私の方からパッシブ換気にするよう要望しました。

山下 パッシブ換気は初めての試みで、今回、仕組みなど勉強できてよかったです。

狩野 私はパッシブ換気が理想的だと思って奥野工務店に入社したんです。機械に頼らず自然な対流だけで空気を整えられるからメンテナンスが不要になる。
山下先生のデザインした壁面太陽光パネルも、将来にわたってお客様のことを考えている家づくりだなと思いました。ベースの考え方が同じと感じられ、コラボできてよかったです。

山下 立場が対等で、パッシブでなければダメというような提案をしてくれて、お互いの良いとこ取りができたと思います。

 

ハードルを超えて

狩野 今回は紹介により山下先生と組ませていただきました。建築家の方と一緒に仕事をするのは、やはりハードルが高い部分があります。 場合によっては現場の意見と違ってしまうこともある。山下先生はこちらの意見も聞いてくれるので、本当に助かりました。

山下 奥野工務店さんはお客様に対して誠実だと思うんです。断熱性能や換気システムなど住環境のことをよく考えて、快適に暮らせることを考えて建てているのだろうなという印象がありました。

狩野 私はやはりパッシブ換気で、家族の健康を守れて、家計も守れる。ランニングコストやメンテナンス費用がほぼかからない、そんな家をこれからも作っていきたいです。

山下 建築に関してゼロカーボンなどいろいろありますが、私はそれぞれの人に合わせて作っていきたいので、具体的にどうしたいというのはないんです。いつも住む人に寄せて設計したいと思っています。