グループ活動

一本の木の活用から学ぶ

北海道次世代の会(紺野将会長)はこのほど、定例会で「下川町研修会」を開催した。同会は、設計事務所や工務店、メーカー、研究者、学生など幅広い分野の会員が集まり、建築に関する学びや体験を行っている。3ヵ月に1回程度、定例会を開いており、今回は25人が参加した。上川管内にある下川町は、面積の9割を森林が占め、森の資源を生かした地域活性化に取り組んでいる。同会のメンバーの中には、下川町で製材した木材を建築に使用したり、町内の施設を設計したり、深いつながりを持つ人もいた。

森と人がつながる

研修にあたっては、NPO法人しもかわ観光協会の高松峰成事務局長がコーディネートした。 1日目は、最初に「下川たてじま林産」のD型倉庫を訪問。代表取締役の麻生翼氏が案内した。倉庫では下川町産の広葉樹の原木をスライスし、低温乾燥機で乾燥させている。 麻生氏は、これまでチップの原料にしかならなかった広葉樹を利活用するために起業した。町内の加工事業者と連携しながら、注文に応じて建築材や家具などを製作し、広葉樹の流通に取り組んでいる。 広葉樹は針葉樹と違って計画的に伐採されるものではないと説明。「いつどんな樹種が手に入るのか分からない」と前置きし、「山の都合と人のほしいものを上手につなげて、丁寧に生かしていく」と話した。

 

下川たてじま林産の倉庫で広葉樹の解説を受ける

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続いて、「下川フォレストファミリー」の工場に移動した。柱や梁の構造用集成材から無垢フローリングや羽目板の内装材までさまざまな木材製品を生産しており、下川たてじま林産の加工業務も請け負っている。常務取締役の二瓶敏幸氏が工場内を案内し、それぞれの作業の工程を説明した。 最後に、まちおこしセンター「コモレビ」で、下川町政策推進課の佐藤大樹氏が町の取組みについて解説。植林、育成、伐採を繰り返す循環型森林経営を行い、また、1本の原木を余すところなく活用するゼロエミッションを実施している。森林バイオマスエネルギーの活用など、森と共生する下川町の全体像と未来像を示した。

 

下川フォレストファミリーの工場で製材の工程を体験

エネルギーも木で

2日目は、「一の橋バイオビレッジ」の見学からスタート。限界集落だった一の橋地区を再生したもので、中心に木質バイオマスボイラー施設を据えた。そこから給湯と暖房を供給される平屋の集住化住宅が軒を連ねる。それぞれの住戸は共用廊下でつながり、住民たちは雨や雪に煩わされることなくお互いに行き来ができる。高齢者が暮らしやすいようにとの配慮だったが、今では若いファミリーにも人気だという。木質バイオマスボイラーによる椎茸栽培も行い、産業と雇用も創出している。

 

一の橋バイオビレッジの集住化住宅

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次に、下川町森林組合の木炭小径木加工関連工場を視察。ここでは木炭の二次加工品や小径木を活用した建築資材を作っている。工場長の石原良彦氏の案内により、丸太加工の工程や調湿効果のある住宅用木炭の製造、防腐処理を施した外壁材などを見学した。 敷地内には同組合で立ち上げたトドマツ精油事業を引き継ぐ「フプの森」の工房がある。フプの森代表取締役の田邊真理恵氏が、針葉樹の枝葉から生まれるエッセンシャルオイルの作り方について解説を行った。 広葉樹と針葉樹、幹から枝葉まで活用し、人の暮らしにまでつながる森との共生を実感する2日間だった。 若手スタッフ3人を連れて参加したキクザワ(恵庭市)の菊澤章太郎専務取締役は、今回の研修について「木造建築の材料にどんなものがあり、どんな人たちが作っているのかを知ることは大切。それぞれに学べたと思う」と話し、「次世代の会はさまざまな業種の人に出会える。若いスタッフにはいろいろな価値観に触れて、世界を広げてほしい」と期待を込めた。

 

下川町森林組合の工場で丸太の加工などを見学

枝葉を原料にしたフプの森の製品