先輩の声
若手大工を育てようvol.03「ものを作る楽しさの中で一番大きい」

取材日:2024/07/15
丸三ホクシン建設 宮下義己氏(2022年入社)
まっすぐ大工へ
丸三ホクシン建設(石狩市)に入社して3年目の宮下義己氏(写真右)。小学校低学年のときにテレビのリフォーム番組を見て、「匠(たくみ)」と呼ばれる建築士がかっこいいと思ったという。家づくりに興味を持ち、そのうち匠の理想の設計を現実の形にする大工職人のほうがすごい、そんな人になりたいと将来の夢を描いた。
高校卒業後は迷わず、大工を養成する札幌高等技術専門学院建築技術課に入学。いよいよ技術が身につけられると、「すべてが新鮮で充実していた」と話す。同じ夢を持つ仲間と競い合うことも喜びだった。 授業の一環に工務店の仕事を体験する社会見学があり、そこで丸三ホクシン建設の現場とモデルハウスを訪問。手刻みで、木をふんだんに使っている。「こんな家を作りたい」と、宮下氏は就職先に選んだ。
入社当初から指導は同社工事部課長の渡辺祐樹氏が行った。大工歴30年以上のベテランだ。現場はプレカットが多かったが、3年目を迎えた今年、宮下氏は初めて念願の手刻みの住宅を手掛けた。 外部の造作はあと3週間程で完成の予定。ここからは宮下氏が一人で施工するそうだ。「本人がやりたいと言ったから」と渡辺氏は笑う。もちろん目は光らせるが、「3年目で任せられるのは早いほう」と言い添える。
また、宮下氏は、(一社)北海道ビルダーズ協会によるポリテクセンター北海道の新人大工育成プログラムの研修を受け、3年目を迎える。他の会社の若手大工と一緒に学べ、励みになったと話す。 能登半島地震の被害地域に応急仮設住宅を建設するための大工派遣にも参加し、貴重な経験を積んだ。「ものを作る楽しさの中で、一番大きなものを大工が作っている」と心に留め、どんな時も「なりたかった大工になれたから楽しくやってこられた」とうなずく。
課題に気づくこと
「若手を育てられるのは大工全員が社員というのも大きい」と渡辺氏。お金や時間は会社が管理するので精神的に余裕ができるという。丸三ホクシン建設は大工育成を見越し、大工の社員化をいち早く行ってきた。渡辺氏も一人親方だったが、声をかけられ社員になった。
若手に対しては、任せられるところは任すが「ダメ出しも大事」という。「できるようになったつもり」が成長するうえで一番の阻害になるからだ。大工の仕事に終わりはなく、次々と課題ができる。「大工を長く続けたからすごいのではなく、その場で考えることを続けていくことが大切」と若手へ伝えていく。