北方型住宅のこと

《第4回》ゼロカーボンヴィレッジ対談:コミュニケーションを生む設計

地域工務店と建築家が協働グループを組んで北方型住宅ZEROの住まいづくりを行う空知管内南幌町の「みどり野ゼロカーボンヴィレッジ」。現在11グループの基本プランが公開され、オーナーを募集中だ。工務店と建築家がどのような考えでプロジェクトに参加し、どのように協働したか、対談形式で内幕を聞くシリーズ。

第4回は大平洋建業(札幌市)社長の佐藤誠氏とボンアーキテクツ(同)社長の森徳彦氏。共にパッシブシステム研究会に所属し旧知の仲だという。今回、移住者がコミュニティに溶け込み、暮らしを作り上げていく住宅「暮らしと庭づくりを楽しむ四季の家」を提案した。二人が「木が一つのキーワード」と語る住宅とは。

木の家と五つの庭

佐藤 プランのスタートは森さんが主導してくれました。最終的な数種類から決める段階では、当社の技術スタッフも入って、コストも含めて意見を出して提案プランに固めていきました。

資材は高騰していますから、なるべく工程を減らすことを考えました。天井と壁の下地やボードと最終仕上げを無くし屋根や外壁の構面を仕上げとして現す、そういった各工程の中でどこを合理化できるかを考えて。一番の特長はやっぱり木ですね。木の室内空間といいますか、塗装なしで、木の手触りや香りがして南幌町のイメージにはぴったりなんじゃないかなと思います。 床組みのような構造を壁にして、現しで見せてしまおうというアイデアなんですよね。外張り断熱にして、木の香りや手触りを室内に広げる。構造用合板と躯体にはカラマツなど道産材を使っていけたらなと。

佐藤 道産材を積極的に使うのは賛成です。できるだけ地産地消しましょうと話し合いました。

太陽光と日射取得の関係で建物を真南に向けています。そうすると土地の四隅にスペースができます。この四隅の一つ、北西側は防風林で冬の風を防いであげて、隣地側はバックガーデンを設けて。一番広いメインの庭は小さな森を作ってあげたらどうでしょうと。お子さんが遊んだり、夏は日陰を作って涼しい風や空気が滞留するようにね。あとは太陽光のパネルの前は日陰を落とせないので、ここは家庭菜園スペースに。最後に五つ目の庭として、中庭のウッドデッキをアウトドアリビングとして考えています。

冬の停電に備える

太陽光発電パネルをカーポートにつけたのは、家の顔を大事にしたいと思ったからです。住宅の壁面にあまりつけたくないなと(笑)

佐藤 私もそう思います(笑)

そもそも、日中に電気を使いたいのは冬なんじゃないかと。壁面設置はやはり冬の発電効率が高いんですよね。ブラックアウト時には、給湯、暖房、それから照明。照明は階段だとか廊下に保安灯をいくつかつけて、それから食事する部屋。みんなが集まる部屋に関しては電気が供給されます。

佐藤 非常時にはすごく心強いシステムですよ。

日中まるまる充電できたとしたら翌日はそのまま1日持つという基準で発電と蓄電池の容量は決めています。あとは薪ストーブ。要はバックアップですよね。換気は、パッシブ換気は電力を使いませんので。機械がないから壊れない、災害時も大丈夫。こんないいことないですよね。なぜかそれがあんまり評価されていない。

佐藤 本当にメリットしかないと思っているんですが、現に(北方型住宅の)ポイントが…。

低いですよね(笑)

佐藤 まあ、今後ですかね(笑)

暮らしを作り、守る

住宅の性能はもちろん、近所付き合いや趣味の付き合いのような、人と人との交流に活用してもらいたいというのが最初のテーマです。 移住の初めは知り合いも少ない中で暮らし始める。そこでどうやって友達を作り、楽しい暮らしにしていくか。家族の中に対してもそうだし、中と外に対してのコミュニケーションが生まれるような設計になっています。いろいろな形で活用しやすい仕組みを作ったので、あとはもうご自由にどんどん使っていってほしいですね。

佐藤 僕はですね、自然豊かな南幌の環境で、若い世代の子育てに貢献できる家を供給したいな、というのが初めに思ったことで。どんどんこれから、我々のプロジェクトに限らず、いろいろご家族が増えればいいなというのが、携わっている理由かなと思います。

北方型住宅ZEROはよく考えられていますよね。いろいろな方向から目標と細かいルールが決められていて勉強になります。

佐藤 道民にとって、北方型住宅ZEROは性能や断熱・気密だけの評価ではなく、地産材の評価などもあって方向性としては非常に重要なんじゃないかなと思っています。