元気な工務店
屋上庭園の実績重ね安定受注
取材日:2022/08/30
寿建設(札幌市)
札幌市手稲区で屋上庭園「そらにわの家」や小上がり風ダイニングを取り入れた「ジャパニーズモダン 和禅」などの住宅プランを提案する寿建設(札幌市)。年間15棟ほど受注がある中、顧客の100%が屋上庭園を希望し、アウトドア好きが自然と集まってくるという。資材価格が高騰している現在、平均坪単価は100万円を超えるというが、受注は安定している。池田寿和社長に同社の取組みについて聞いた。
アウトドア派に人気
戸建住宅に屋上をつくる「そらにわの家」の建築に取り組み始めたのは約10年前。社長の趣味がアウトドアで、「日焼けやバーベキューを屋上で楽しみたい」という思いから構想した。 最初は屋上を売りにする本州の企業のフランチャイズに加盟。しかし、同企業の北海道での屋上施工実績はなく、排水部分の凍結など寒冷地の住宅に採用することに不安があった。
そこから独自で屋上施工の方法を模索。浴槽やプール、ベランダなどに採用される「FRP防水 SR―1 一般歩行防水工法」を導入。強度が高く柔軟性がある軟質ポリエステル樹脂を屋上一面に二重に敷く。 下地となる合板の部分に独自の補強を加え、より強固な対策を講じている。
池田社長は「屋上庭園10年の実績があるが、今まで雨漏りなどのクレームは1件もない」と胸を張る。昨年の大雪で屋上に2m以上の雪が積もった物件もあったそうだが、それでもトラブルはなかった。
通常、屋根は10年ほどで塗装メンテナンスが必要だが、「そらにわの家」の屋上メンテナンスはタイルを外してほこりを掃除する程度。池田社長は「10年の防水保証はあるが、それ以降でも安心して使用できると思う」と話す。
屋上の用途は顧客によってさまざまで、バーベキューやビニールプール、かまくら作り、五右衛門風呂、ビールサーバーを設置する人もいるという。中にはテントサウナを設置して楽しむ人も。「屋上だと騒音や匂いなど周囲に迷惑をかけることなく、プライベートな時間を過ごすことができる」と池田社長。流し台を設置したり、お湯を出せるようにするなど水回りの設備も整備できる。
費用については「2階建以上の戸建住宅で屋上を設置しようとすると、200~400万円ほどかかる。合板部分への補強や、FRP施工、タイルなどの経費」と説明する。今では受注する顧客の100%が屋上庭園を希望する。「アウトドアが趣味のお客様が多く、乗っている車はだいたいSUV」と池田社長。
スタッフが情報発信
「そらにわの家」を始めてからは、釣り道具がレイアウトできる設計や、凝ったガレージでバイクをいじれるような設計などの依頼が増えた。スタッフブログでそれぞれの趣味や施工現場の情報を発信しており、そこからホームページにたどり着く顧客が多いそうだ。「わくわくすることが大好きなスタッフばかり」と話すように、趣味などの身近な場所から着想するのは同社の強み。
2005年頃から取り組み始めた小上がり風ダイニングが標準仕様の住宅プラン「ジャパニーズモダン 和禅」も「会社のスタッフとよく行っていた居酒屋からヒントを得た」という。「和禅」のモデルハウスは好評で受注数は徐々に増えていった。とくに居酒屋を好む男性に人気があり、今でも2割ほどの顧客が小上がり風ダイニングを希望する。
枠組壁工法への転換
池田社長はもともと、断熱などの性能に力を入れる建築会社に勤めていたため、住宅の性能には高い関心があった。2000年頃には、在来工法からツーバイシックスの枠組壁工法へ転換。その理由は、普通に建てても高気密の住宅になるうえ、壁が厚くなる分、断熱を強化できるからだ。「当時は他にツーバイシックス工法に取り組む工務店は少なかった」。
「そらにわの家」もツーバイシックスを基本とし、「在来工法ではお断りしている」という。池田社長は「リフォームで屋上庭園をつくってほしいと依頼が来るが、在来工法だと強度が足りないため雨漏りすると思う」と話す。
現在のUA値は0.32W/㎡K以下が標準仕様。硬質ウレタンフォーム110㎜を充填断熱し、押出法ポリスチレンフォーム30㎜を付加断熱。窓はアルゴンガス入りLow―Eペアガラスを採用。構造計算は自社で行い、ガレージ内蔵の住宅を除いて耐震等級3を標準とする。
来年の春までには、太陽光発電パネルを搭載した住宅プランをスタートさせる予定だ。池田社長は「UA値0.22W/㎡Kを目指した高性能な住宅に取り組みたい」と意気込んでいる。