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藍杜町家 4軒で美しい街並みを創る

小松建設は、HOUSE&HOUSE一級建築士事務所(札幌市)の須貝日出海代表とコラボレーションしたモデルハウスを6月にオープンした。同時にモデルハウスに隣接する3区画を販売。ここにはモデルハウスの外観と統一感を持たせた住宅が建てられ、4軒揃ってひとつの町になるという。「藍杜町家(あいもりまちや)」と名付けられたその町は、伊達市の歴史をも踏まえ、新しく美しい街並みを形成する。小松幸雄社長と須貝氏に話を聞いた。

伊達にふさわしく

藍杜町家は4区画から成る。1区画がモデルハウスで、ほか3区画は規格住宅の藍杜町家シリーズで建てることを条件に分譲する。分譲地の面積は66.91〜73.35坪。統一感のある家が連なることで、美しい街並みが生まれる。

須貝氏が設計した藍杜町家の外観は、日本家屋で伝統的に用いられてきた焼杉と漆喰の組み合わせ。焼杉は杉板を焼いて表面を炭化させたもので、この炭化層が腐食を防いで耐久性を高める。深みのある黒色も特徴。西日本を中心に昔から住宅に使われており、今回は愛媛県産の焼杉を使った。

漆喰は、小松建設のグループ会社あいもりの外装材「ビオシェル」。ホタテの貝殻を原料としたほたて漆喰とEPS断熱材を合わせた湿式外断熱システムで、外壁仕上げと断熱施工が同時にできる。屋根はガルバリウム鋼板でいぶし瓦色のような濃い銀黒を採用。1階部分の焼杉の黒、2階の漆喰の白、屋根の銀黒色のコントラストが武家屋敷を彷彿とさせる。

また、モデルハウスは分譲地より敷地が広く、門構えのようなガレージを設けた。そこから屋根付きのアプローチをたどり、広々とした庭を眺めながら家に入る。昔の屋敷にみられる外廊下にならったしつらいである。小松氏は、「この武家屋敷のような連なりが伊達市の街並みにぴったりと思った」と絶賛する。伊達市は仙台藩の士族が開拓した歴史ある町だ。

 

ほたて漆喰の壁と道産カラマツの床

想像を超えた提案

小松氏と須貝氏が出会ったのは5年ほど前。以来、小松氏は須貝氏が設計する家に注目してきたという。新しいモデルハウスを作るにあたって須貝氏に声をかけたのは、「ずっと自社設計でやってきたがパターン化しているように感じ、そこから抜け出したかった」と明かす。

須貝氏は地産地消の家づくりをテーマにしている。小松建設は道産カラマツのフローリングとほたて漆喰の内装を特徴とする「コマツスタイル」で、地域の気候風土に合った住宅を作ってきた。方向性が同じだったことが、今回のコラボレーションを実現させた。

依頼したのはモデルハウス1棟だけだったが、須貝氏は4区画分の住宅模型を携えてきた。「びっくりしたが、ぜひやりたいと思った」と小松氏。最初は分譲地の一体開発まで考えていなかったが、「全く自分の概念になかったものを形にしてくれたので、この町家というものを完結させたい」と強い思いを持った。

須貝氏は、「小松建設は伊達市で100年以上続いていて地域の活動もされているので、街並みに対しての提案があったほうが小松建設らしさが出るのではと考えた」と説明する。

 

モデルハウスの外観

地域工務店の役割

街並みの形成について、小松氏も須貝氏も伊達市の郊外にある住宅地「田園せきない」が念頭にあった。優良田園住宅事業として2007年より宅地販売され、全53区画の住宅のうち15戸を小松建設が建築した。地元の建設会社が街並みを意識して建てた家が立ち並び、調和のある美しい景観を形成している。

「15年前の分譲だが住んでいる人たちは今も満足している」と小松氏は話し、「家は建てて終わりではなく、街並みを作り、その街のコミュニケーションを図ることも地域工務店の役割と思う」と言い添えた。

須貝氏は、「若い世代は街並みに対して好意的。みんなが好き勝手に違うものを建てたいという時代ではない気がする」と語り、「統一性があると趣味志向の似ている人たちが集まるから暮らしやすい。それに街並みを大切にしているとそこに住みたいという人が多く現れ、資産価値も上がるのでは」と街並みの大切さを強調した。

藍杜町家のモデルハウスは3年ほどの常設を予定している。小松氏は、「ここを拠点にして、ほかにも4〜6区画の土地を仕入れて藍杜町家シリーズを作っていきたい」と今後の展開に意欲を示す。

 

庭を眺められるアプローチ