住まいの話題
コレモだけで全館暖房を可能に

取材日:2024/03/15
寿建設(札幌市)
寿建設(札幌市)は札幌市手稲区前田に新たにモデルハウスを完成。現在公開している。3階建、延床面積135.80㎡で、同社の大きな特徴のひとつである屋上庭園も完備。しかし、この物件でもっとも特徴的なのは、コレモを暖房の熱源とする全館空調システムを搭載する点だ。エコジョーズと併用しなくてもコレモ単独で暖房に必要な熱量を賄えるという、画期的なシステムと同社の取組みについて取材した。
新モデルハウスで実証
コレモを暖房の熱源とし、から屋(札幌市)の「エコブレス」で全館空調を行っている。コレモは通常、エコジョーズと併用するが、この物件ではコレモ単独で暖房に必要な熱量をすべて賄っている点が大きな特徴だ。
実は、コレモ単独運転の全館空調は始めから狙って計画されたわけではない。全棟でスマート電化を採用してきた同社だったが、池田寿和社長は昨今の電気料金の高騰や社会情勢の変化を受け、「自社のプランにも幅と選択肢を持たせる必要がある」と考え、ガス給湯と全館空調を組み合わせた新プランの開発に取り組んだ。当初コレモは発電と給湯に使い、暖房には別の熱源を使うつもりだったが、全館空調システムに熱源を選ばないエコブレスを採用したことでコレモとエコジョーズを暖房にも使用する形になった。
ところがモデルハウスが完成すると、コレモとエコジョーズの併用運転では室温が上がりすぎることに気づき「コレモ単独運転を試してみたところ、それだけで十分に全館暖房が可能なことがわかった」と池田氏。取材時は、設定温度22℃で各部屋に置かれた温度計は、3階フリースペースは21.8℃、2階リビングは22.3℃、1階寝室は23.8℃を示し、十分に室内が暖まっていた。
コレモはガスエンジンで発電。電気は自家消費し、余剰分は売電する。同時に、発電の際に発生する熱を暖房や給湯に使用する。この発熱温度はおよそ50~60℃と振れ幅があるため、通常はエコジョーズと併用して温度を一定にし、暖房器へと送られる。しかし、このモデルハウスの全館空調システムを設計したから屋の森田孝之社長は「床下の温水パネルなどの施工に独自のノウハウがあり、床下の空気をムラなく暖めることができる」と話し、コレモ単独運転でも安定した暖房が可能と強調する。
また、「コレモの発熱量だけで全館暖房を賄うにはどれだけの外皮性能が必要か逆算している。その計算にも独自のノウハウがある」と、この暖房が成立する秘訣を語る。今回のモデルハウスではUA値0.20以下が必要と試算していた。
モデルハウスは2×6の枠組壁工法、3階建。延床面積は135.80㎡。断熱仕様は、軸間に30倍発泡硬質ウレタン120㎜、付加断熱にフェノールフォーム30㎜。基礎立ち上がりは外側に押出法ポリスチレンフォーム30㎜、内側に同75㎜。土間下も同75㎜。天井は吹き込みグラスウール302㎜。窓はすべてトリプルガラス樹脂サッシを使用。
UA値は0.22W/㎡K、C値は0.17㎠/㎡となる。試算の必要UA値をややオーバーしたが、実運用上で暖房の熱量は十分に足りている。
池田氏は「建築費はこれまでの弊社のスマート電化モデルと差はない。選択肢としてしっかり提案できる」と話し、今後も継続して暖房の実測値のデータを集め、将来的にパッケージとして展開する見込み。
プロパンガスのボンベ庫を設置する必要があるため都市ガス地域と比べイニシャルコストは50万円ほど高くはなるが、コレモは都市ガス地域でなくても設置できる。モデルハウスが建つのはプロパンガス地域だ。
池田氏は「将来何が主流のエネルギー源になるかは分からない。災害に対するレジリエンス性も求められる。工務店も市場のあらゆる需要に対して幅広く応えられる準備が必要だ」と先を睨む。

床下の放熱器