多岐にわたる分析
苫小牧市内に木造軸組工法の平屋モデルハウスを建設中で、5月末頃の完成を予定している。延床面積72.87㎡、UA値0.20W/㎡K、許容応力度計算による耐震等級3、制震ダンパーを使用し、太陽光発電パネル10.32kW、蓄電池7.7kWhを設置。北方型住宅ZEROの基準を満たす。
プロジェクトは、工務店が用意したベースプランを学生らが分析。その結果をもとに変更点などアドバイスを行う形で進められた。 検討の基礎になる気候分析には、立地の経緯度、隣地の建築物など周辺環境、地域区分や日射地域区分、気温と湿度などがある。 それをもとに、①主開口方位②屋根勾配③軒の出④袖壁の有無⑤サッシ位置とサイズ⑥カーテンなどのサッシ付属物――の6項目を検討した。 なかでも①は構造に大きな変更を要する検討で、冬季の日射取得量が最大になるのは、敷地の中で建物の主開口面を道路に対して15度傾けた配置になると試算された。
決定プランでは道路に平行の配置を採用したが、大鎮キムラ建設工事部管理リーダーの嶋山恒宣氏は「工務店の発想では出ない指摘。敷地の有効面積や、平行配置でも日射取得は悪くなかったため採用には至らなかったが大いに刺激を受けた」と振り返った。 敷地分析などを行った同研究室博士課程2年の兪潮韻(ユ・チャオユン)氏は「エネルギー消費量だけを考慮するのではなく、住宅設計と組み合わせた総合的なプラン決定が重要だ」と述べた。
サッシはYKK APのAPW430を、南、南東、南西はクリア、北はブルーとガラス色を使い分けて採用している。 室内環境では換気計画について検討。当初プランに対して換気口の位置や吹出しの方向などが変更された。 シミュレーションでは臭いの発生源を台所としたケースと発生源が特定できないケースの2パターンで分析。換気時の空気の流れ方や効率、滞留する箇所はないかなどを調べた。
換気効率検討を行った同研究室修士課程2年の佐武大氏は「配置計画などを見直すことで、空気の入れ替わる速さや臭気が室内へ拡散するのを抑える効果が向上した」と解説した。 大鎮キムラ建設の木村匡紀社長は「例えばひと口にサッシの収まりと言っても、それが住環境や一次エネルギー消費量にどう影響するかなど、ここまで具体的にわかるのかと驚いた」と話した。