住まいの話題

能登に大工を派遣①

北海道ビルダーズ協会は4月27日より約1ヵ月間、今年1月に発生した能登半島地震で被害を受けた地域へ大工を派遣した。(一社) JBN・全国工務店協会の要請を受けたもので、木造応急仮設住宅の施工応援を行った。同協会はこれまで、北海道が独自に進めている木造応急仮設住宅の設計や建設に協力してきた。
今回の派遣で、実際の現場を経験することとなった。

要請から1週間かからず

大工派遣にあたって、同協会会員の丸三ホクシン建設(石狩市)と武部建設(岩見沢市)が要請に応じた。 丸三ホクシン建設が第一陣で4人の大工を4月27日から5月14日まで、第二陣で4人を5月13日から25日まで、武部建設は5人を4月28日から5月11日まで、合計13人の大工が約1ヵ月間にわたって従事した。

能登半島地震木造応急仮設住宅対策本部(金沢市)に、事務方として4月中旬より派遣されていた同協会の中田浩司事務局長が取りまとめ、21日の要請から最初の派遣までわずか6日のスピード対応だった。

 

 

全木協が主導する

木造応急仮設住宅は、木造軸組工法で建てる仮設住宅。従来のプレハブ工法に比べ、木の温もりが感じられる心地よい住環境を提供し、恒久的に使用できる。地域工務店を主体に地元の資材や人材を活用できるため、地域経済の復興にも寄与する。東日本大震災(2011年3月発生)を契機に開発され、その後、熊本地震(16年4月発生)において地域工務店が手を携え、約700戸を供給したことで注目を浴びた。

木造応急仮設住宅の建設にあたっては、全国建設労働組合総連合(全建総連)とJBNが共同で設立した(一社)全国木造建設事業協会(全木協)が窓口になる。 あらかじめ協定を結んだ都道府県から要請を受けた場合に、全木協が主幹事会社になる工務店を推薦。都道府県はその工務店と請負契約を結び、労働者やほかの協力工務店は主幹事会社と契約する仕組みになっている。

また、必要な労働力の確保を全建総連が、集められた労働者の管理はJBNが行う。 主幹事会社や協力工務店は地元を主体とするが、石川県では全木協としての施工体制が未整備だったため、今回は熊本地震で経験を積んだ熊本県の工務店が中心となり、主幹事会社はエバーフィールド(熊本市)が担当している。

 

長期的に使用するため基礎はコンクリート

木造仮設を生かす

石川県は、応急仮設住宅について①従来型②まちづくり型③ふるさと回帰型の三つに分け、被災者や市町の意向を踏まえて整備する方針を掲げている。 ①は、避難所生活の早期解消を図るため、プレハブ住宅を迅速かつ大量に供給し、入居期間終了後に撤去する。 ②は、景観に配慮した新しい街の整備を目的とし、長屋型の木造応急仮設住宅を建設する。 ③は、被災地から離れた住民がふるさとに回帰することを目的に、戸建風の木造応急仮設住宅を整備する。

②③共に入居期間終了後は、公的住宅への転用を基本とする。 今回、道ビルダーズ協会が要請を受けたのは②の建設で、能登半島の6ヵ所の現場のうち、派遣大工全員が旧七浦(しつら)小学校グランド仮設住宅(輪島市門前町)に配属された。廃校のグラウンドに1DKから3Kまで計44戸を建設し、6月中旬に完成予定。

 

景観に配慮した瓦屋根

道内でも備え進む

北海道は、17年に全木協と「災害時における応急仮設住宅の建設に関する協定」を締結している。道ビルダーズ協会は、全木協北海道協会の事務局として、道の木造応急仮設住宅の設計や建設に協力してきた。

 21年に道内初の木造応急仮設住宅モデルを十勝管内清水町に建設。RC基礎の恒久仕様で、単身者用の1DK、小家族用の2DKの1棟2戸を整備した。 これを清水町が移住体験住宅として2年間活用。その間、道立総合研究機構北方建築総合研究所(北総研)が温熱環境調査を行った。調査終了後に1DKと2DKの2戸を3LDKの1戸にする間取り改修と断熱改修を行い、清水町の公的住宅として使用する計画だったため、今年9月に改修工事を実施する。

中田氏は、能登半島地震での経験を踏まえて木造応急仮設住宅の大切さを訴え、「工期とコストだけでなく、後々の使い方を考えた提案をしていきたい」と提起した。 さらに、「応援大工さんたちには迅速な対応と、また、不自由な中でのチームとしての作業を行なっていただいた」と感謝を述べ、「この経験は、今後の災害対応の現場の指導者にも役立つものと考えている」と話した。