北方型住宅のこと

《第7回》ゼロカーボンヴィレッジ対談:南幌の環境を取り込む二つの提案

地域工務店と建築家が協働グループを組んで北方型住宅ZEROの住まいづくりを行う空知管内南幌町の「みどり野ゼロカーボンヴィレッジ」。現在11グループの基本プランが公開され、オーナーを募集中だ。工務店と建築家がどのような考えでこのプロジェクトに参加し、どのように協働していったのか、対談形式で内幕を聞くシリーズ。

第7回は太平ホーム北海道(札幌市)代表取締役の西村清美氏と一級建築士事務所ノムアーキテクツ(同)の野村和也氏。普段からタッグを組むことが多い両者がスムーズに協働。「内外をつなぐ家」をコンセプトに、平屋と2階建の二つのプランを提案した。真南に面した開放的なリビングから縁側やテラスを介して緩やかに外とつながり、南幌の平坦で広々とした景色を取り込んでいる。アプローチを兼ねたカーポートには壁面太陽光発電パネルを配した。

お互いにやりやすい

西村 野村先生とはゼロカーボンヴィレッジで組む前からもう2、3年ぐらい一緒にやらせてもらっていて、お互いよく知っているのでやりやすかったですね。

野村 元々知り合いの社員さんがいたのがきっかけで、いまは私の方に依頼が来た物件もほとんど太平ホームさんにお願いしています。知らない人に建ててもらうよりやりやすいですし、大工さんがたくさんいるのも助かりますね。早めに連絡して、あの大工さん空いてますか?なんてお願いすることも(笑)

西村 野村先生のプラン集を作ってもらって、営業の方で提案に使ったりしています。全部そのままは使えなくても、部分的に取り入れたりね。お客様に対して見栄えのするものを見せられるのはありがたいですね。

野村 今回は建築家協会の方から情報が入ってきて、面白そうだなと思って私からお声がけさせてもらいました。

西村 きた住まいるメンバーにも入っているし、ちょうど興味を持っていた時にお誘いいただいて、話が早かった。野村先生なら弊社の仕様もわかっているしなんの問題もない。逆に他の方とだったら参加できなかったかもしれない(笑)

南幌の環境から発想

野村 札幌ではなかなか扱えない規模で、難しいけれども面白い敷地。コンセプトとして、外の広がりを内部に入れたい。ただ南幌はすごく平坦な土地なので、ある程度内にこもれる場所もないとプライバシーが気になる。それを意識して、中間的な空間として縁側的に覆う部分やテラス的なものを作りました。

西村 壁面太陽光についてはネオマリーダーズクラブの活動で勉強したことがあって、概要はわかっていました。ただ普段やっていないので、抵抗感というか、実際にやってみないと分からない部分はすごくありましたね。

野村 デザイン的な話では、窓の上におでこのように張るのが嫌で、低いところに付けたかった。南幌は風がすごいので、雪や氷が付着することを考えると、メンテナンスが楽なのはカーポートの壁かなと思いました。他の方のプランとけっこうかぶってますが(笑)

コストのバランス

西村 平屋で4700万円、2階建で4200万円。あまり極端に高くても難しいけど、普通のものを立てても重みがないというか。

野村 金額的に選択肢があった方がと思い、2案用意しました。平屋はちょっと贅沢な分、ゼロカーボンのポイントを少し抑え気味にして、2階建は逆に設備的なコストを少し上げて、コストのバランスを考慮しました。もっと下げることもできましたが、ある程度のスペックは見せたかった。太平ホームさんの標準仕様で付加断熱にネオマフォーム50㎜のところをこの物件では100㎜にして、断熱にはコストをかけました。

西村 断熱等級6や7が当たり前になってきて、もう安いだけの家ではお客様に受け入れられない。かといってコストをそのままただ上乗せしても納得が得られない。一定の性能を担保しつつ、どこまでコストを抑えられるか。これからの住宅業界はそういう競争になっていく。

野村 太平ホームさんの標準仕様なら北方型住宅ZEROにするのは全然難しくない。認証を受けていないだけで、性能の基準を満たした家はたくさんあると思いますし、その水準のものを最低限にしましょうというぐらいの気持ちで、たくさん増やしていければいいんじゃないかと思います。