北方型住宅のこと

《第8回》ゼロカーボンヴィレッジ対談 :南北軸に奥行きのある住まい

地域工務店と建築家が協働グループを組んで北方型住宅ZEROの住まいづくりを行う空知管内南幌町の「みどり野ゼロカーボンヴィレッジ」。現在11グループの基本プランが公開され、オーナーを募集中だ。工務店と建築家がどのような考えでこのプロジェクトに参加し、どのように協働していったのか、対談形式で内幕を聞くシリーズ。

第8回はキクザワ(恵庭市)専務取締役の菊澤章太郎氏と弘田亨一設計事務所(札幌市)の弘田亨一氏。今回のプロジェクトが初の協働となる両者が、プランより先に決めたのは建築費だという。断熱性能や太陽光発電設備などを盛り込んだうえで空間的にも成立する家を、現実的なコストで目指した。 今後のゼロカーボン住宅の普及まで視野に入れたコンパクトでありながら開放的なプランは、工務店と設計事務所がお互いを尊重した中から生まれた。

 

 

細長い形のメリット

菊澤 プランそのものに関しては、こちらから要望みたいなものは出していないんです。

弘田 そうですね。すごく信頼していただいて。菊澤専務との打合せでお互いに一番気を使ってポイントにしていたのは、建築コストについてです。建築費をとにかく3000万円台に抑えて、最終的なユーザーの負担が、助成金なども含めて4000万円未満になるあたりを狙っていこうと。そこがお互い一致していて。

菊澤 そうですね。

弘田 ゼロカーボン住宅のような取組みは、いいものだけどやっぱり無理な費用がかかるんだとユーザーに思わせてしまったら社会的には損失です。そうじゃない、予算的にも決して無理のない範囲で実現できるところを考えましょうと。

弘田 コストのことを踏まえて、建物は15坪総2階の30坪でまとめたいと最初から考えていました。そのうえで、細長い形は基本的に梁は壁から壁にかけられるので、室内に立つ構造的な柱は少なくできます。間仕切りを作らない、ワンルーム的な空間を実現しやすい。そうすると、多様な層に対して柔軟にプランのアレンジができる。ここは意識的にやっています。 そしてキクザワさんと一緒にやるので、太陽光を積極的に使いたい。そこから南北軸に細長い建物の形が決まりました。東西に壁面が多く取れるので、壁面太陽光パネルを多く設置できる。太陽光発電設備に関してはキクザワさんからいろいろ教えていただきました。

菊澤 ソーラーに関しては、実績とノウハウには自信があるので、そこはお伝えさせていただきながら。

弘田 実は最初に提案した時はもうちょっとパネルの枚数が少なかったんですよ。でも大工さんの手間などを考えると、枚数を増やした方が逆にメリットが出てくるということで。

菊澤 外注だとキロワットあたりいくらという料金体系が多いみたいですが、うちはソーラー関係を完全に内製化できています。自社設計、自社仕入れ、自社施工でやるので、何枚載せても設置費用にはほとんど差が出ないんです。

弘田 じゃあいっぱいいこうか、みたいな(笑)。結果的には多く載せても低価格帯がキープできるので、かなり強みになると思います。

winwinの関係

菊澤 私たちは自社設計・施工がメインですが、自社の中で進めているとどうしても凝り固まってしまうというか、断熱・気密性能やお施主様の要望にどう応えるかに重点を置きがちになるんです。間違いではないし当然のことではあるんですが、これからの時代は、それを前提としてその上にさらに新たな価値を提供できることが大切になってくると思っていて。 設計事務所さんとお話させていただくと、もっと広い視野というか、立地の周辺環境や気候風土を含めたストーリーだったり、いろいろな角度からのアプローチをされているなと感じました。そういったソフトの部分を吸収できたらと思っています。逆に、ハードの部分、施工技術や蓄積されたノウハウはできるだけオープンにお話させていただいて。

南幌ゼロカーボン計画提案書

 

弘田 お互いに刺激が得られるのがタッグを組むメリットですね。うちも、普段は木造は在来工法を中心に設計していますが、せっかく一緒にやるんだから今回はキクザワさんが得意としている枠組壁工法で考えました。僕も新しいことにチャレンジしたいですから。

 

 

 

取組みを広げる

菊澤 ここからが本番ですが、もう少し問い合わせが来てほしいですね。

弘田 南幌町ゼロカーボンヴィレッジそのものが広く知られるようになれば、共感してくれる方や興味を持ってくれる方は一定数いると思うんです。現状はそこまで情報が届いていない。

菊澤 弊社でも自社ホームページ等で積極的に告知していこうと考えています。

弘田 僕らが草の根的に営業するというのももちろんありますが、やっぱり道も含めてみんなで積極的に発信していかなきゃいけないですね。