北方型住宅のこと

《第9回》ゼロカーボンヴィレッジ対談 :無理をせず、無駄にしない

地域工務店と建築家が協働グループを組んで北方型住宅ZEROの住まいづくりを行う空知管内南幌町の「みどり野ゼロカーボンヴィレッジ」。現在11グループの基本プランが公開され、オーナーを募集中だ。工務店と建築家がどのような考えでこのプロジェクトに参加し、どのように協働していったのか、対談形式で内幕を聞くシリーズ。

第9回は橋本川島コーポレーション(旭川市)執行役員住宅事業部長の村上雅人氏と澤村尚浩建築計画室(同)主宰の澤村尚浩氏。ゼロカーボンヴィレッジは壁面ソーラーパネルが必須条件だが、多雪地帯の道北では太陽光発電を導入する施主はまだ少ないという。村上氏も澤村氏も、今回の取組みで実績を積むことに意欲をみせる。ただ太陽光パネルを載せるのではなく、住まい手の暮らし方まで考えたエネルギーを無駄にしない住宅を提案する。

 

シンプルで機能的

澤村 今回はまだクライアントが決まっていない段階でのプラン作りなので、4人家族をベースにしていますが可変性を意識しています。例えば子どもが独立した後は夫婦別々に広い部屋を持てたりとか、介護が必要になったらトイレと洗面所を一体化して広く使えるようにできたりとか。将来的な変化に極力予算をかけずに対応できるように考えました。

村上 私は移住者をイメージしていたので平屋のプランがいいと思いました。リタイア後の夫婦二人で住みやすいことも考えられているし。

 

 

澤村 プランの特徴としては二つのテラスを設けたこと。せっかく北海道に住むのだから、冬も夏も家の中と外を楽しめる暮らしをしてほしいという思いがありました。家の中のインナーテラスは土足でもいいし、住む方の暮らしや趣味に合わせていろいろな使い方ができます。

村上 以前から澤村さんの設計はシャープなところがいいと思っていて。シンプルだけど機能性がちゃんとある。

澤村 普通の暮らしやすさということをいつも念頭に置いています。今回のプランに洗濯乾燥室を設けたのは、妻から「洗濯物が乾かない」ってよく言われているから(笑)。

住人が環境を意識

澤村 壁面太陽光パネルの取付場所は悩みましたが、テラスやリビングは庭に対して開放的にしたいので、カーポートの壁面を利用する案に落ち着きました。低い位置にあるのも維持管理がしやすくていいのではと。敷地も広いので十分に陽が当たるでしょうし。あと、一部、勾配屋根にも載せています。

村上 このアイデアはいいですね。道北は雪の問題があるけれど壁付けだと発電量が増えるのでは。ちょうど今、他の物件で壁付けの太陽光パネルを施工しているけれど、南幌でも実績を積んでしっかり対応できるようにしていきたい。

澤村 ただ、太陽光で発電するからどんどん電気を使うのではなく、基本的には環境に負荷をかけない暮らしをしてほしいと思っています。冬は薪ストーブを使ってもいい。
夏のエアコンもなるべく使わなくてすむように設計上の工夫をしています。平屋だけどリビングの上部を吹き抜けで高くして、暖かい空気を上から逃すなど。できるだけ自然を利用して、そのうえで電気を使うというイメージです。

村上 弊社で建てる住宅は断熱等級6レベルで施工しています。BELSも星四つもしくは五つで登録しています。もっと上もあるけれど個人的にはこれくらいで十分だと思います。

澤村 性能や技術的なことは村上さんに相談しながら決めました。性能はもちろん大事ですが、住まい手自身が勉強して、少しずつでも環境に良い暮らしをするように意識を変えていくのも大切かと。薪ストーブを使うなら植樹の協力をしようという風に。

道北でチャレンジ

澤村 南幌町のいいところは都市部からの距離感がほどよく近くて、北海道らしさが感じられるところですね。

村上 敷地が広いから庭づくりや家庭菜園を楽しむイメージがある。庭でキャンプもできる(笑)。

澤村 土地が広いと暮らし方にいろいろな可能性が開けますよね。南幌町から補助金がもらえるんですけれど、性能や隣地境界線など最低限のルールはあっても、建物の形状やデザインに関してはあまりうるさくない。設計者にとっては、とてもやりやすく、やりがいがあります。

村上 それぞれのチームで設計事務所さんの特徴が出てくるから、雰囲気的にすごく良くなるのでは。そしてデザインは違っても、性能は一定の基準を満たしている。その安心感がお客様にとっていいと思います。

澤村 住人同士で光熱費の比較とかされたら怖いですけどね(笑)。同じくらいの性能なのにって。

村上 今後に期待しているのは、ゼロカーボンヴィレッジを道北でもチャレンジする自治体が出てきてくれること。地元企業としてぜひ参加したい。
弊社は2005年に住宅事業部を新しく立ち上げて、その時ちょうど北方型住宅の仕組みづくりが始まったのでその仕様を取り入れてやってきた。将来的に道内のどのエリアにもゼロカーボンヴィレッジができれば、北方型住宅がもっと一般に浸透するようになると思います。