元気な工務店

道内にYUCACOシステムの家を普及

見学ツアーで感銘

久保田社長がYUCACOシステムに出会ったのは2019年。会社を設立してから約5年後のことだった。取引先の会社より案内があり、YUCACOシステムを推進している岩手県の建築会社のモデルハウスを見学するツアーに参加した。ここで室内の快適さに驚いたという。

YUCACOシステムの空調室

「2月の真冬だったが、玄関から入ってすぐ暖かく、どの部屋も室温が一定だった。それをエアコン一台で実現できるなんてすごいと思った」と振り返る。
YUCACOシステムは、東京大名誉教授の坂本雄三氏が中心となって開発した。16年に「空調システム」で、さらに21年にウイルスや菌の飛沫対策に効果的な「換気空調システム」として特許を取得している。

約1畳の空調室にエアコン一台を設置。そこに熱交換ユニットで取り入れた新鮮な空気を入れ、適切な温度と湿度に調整する。送風機(DCファン)で各部屋に供給し、温度ムラを解消したどこにいても快適な住まいを実現する。

フィルターを通して外気を取り入れ、花粉や粉じんも除去。高気密高断熱住宅を基本とし、エネルギーロスを抑えて光熱費を削減する。また、壁付けのエアコンやパネルヒーターなどがいらないので、リビングや居室がすっきりとした空間になる。

道内第一号に反響

道内初の1棟は久保田社長の同級生の新築だった。新しいシステムなので不安もあったが、友人が背中を押してくれる形になったそうだ。
当初、豊富な実績を持つ道外の建築会社がレクチャーなどサポートに訪れ、請負の大工たちも交えて意見交換を行った。大工たちは技術を磨き、ゴエン建築社がYUCACOシステムの家を建てるのに欠かせないチームが作られていった。

第一号の家は20年に地元の新十津川町に完成。完成見学会を開催すると、見学者から次の受注があった。反響は大きく、手応えを感じた。

 

天井を低く、一部を吹き抜けにしたリビング

体感して納得する

YUCACOシステムを採用すると建築費が300万円プラスになるが、エアコンは温度調節に使う程度で冷暖房費の削減につながり、「300万円は建てた後のランニングコストを先払いしたようなもの」と久保田社長。施主にそう説明すると、理解が得られやすい。

ただ、施主が快適さを納得するには、自身がそうであったように体感してもらうしかない。「モデルハウスがないと信憑性に欠ける」からと、自社の近くの土地を購入して今年12月にモデルハウスをオープンした。
昨今の資材価格の高騰などを鑑み、ユーザーが手に入れやすい価格帯にするため、この地域にしてはコンパクトな3LDKをプラン。延床面積は106.49㎡。UA値は0.26W/㎡Kで、断熱性能の上位等級6に相当する。壁は高性能グラスウール16㎏が100㎜と硬質ウレタンフォーム61㎜のダブル断熱。天井は350㎜の吹き込み用ロックウール。基礎断熱で100㎜の押出法ポリスチレンフォームを使用。
空調室は2階に設置し、ここから温度を調整した空気が家全体に広がる。来場者は温度ムラのない暖かさとファンの音がしない静けさ、壁付け冷暖房器具のない室内のデザインの優位性を体験できる。

 

モデルハウスの外観

 

天井はあえて低く

モデルハウスで提案しているのは、YUCACOシステムだけではない。久保田社長が「私の好きなものを集めた」と話すように、素材やデザインへのこだわりがある。

リビング・ダイニングは、天井に合板を貼り、ナチュラルな雰囲気に仕立てた。壁は調湿・吸湿性のあるアクリル樹脂の塗り壁材を使用。幅木もフローリングに合わせて木質系で造作した。

天井の高さは、あえて通常の住宅より低い2200㎜に設定。昔の日本家屋にならったもので、「椅子に腰掛けた時に落ち着く」という。そこには建築家の伊礼智氏や中村好文氏へのリスペクトがある

「普遍的なもの、廃れないものを作っていきたい」と久保田社長。このモデルハウスのコンセプトは、「老夫婦が住む家」と明かす。広くなくても、新製品が溢れていなくても住みやすく落ち着いていられる。きっと老夫婦も気に入ってくれるだろう。普遍的な住まいは、誰もが心地よく住み続けられると確信している。

 

キッチンもカウンターも造作