グループ活動

熟成した木材」を知る

地域に根差した工務店グループ、アース21(菊澤里志会長)は10月15、16の両日、2024年度旭川例会を開催した。
1日目はバスツアーによる現場見学会を実施。旭川市内では、創樹(旭川市)の完成物件と高組(同)のモデルハウスをそれぞれ見学した。

創樹の完成物件は、全館空調YUCACOシステムを搭載した平屋。LDKを勾配のある天井とし、広がりのある空間を演出していた。高組のモデルハウスは2階建で、ダイニングキッチンと分離したステップフロアのリビングやドレッサールーム、階段の壁一面のギャラリースペースなど見所が満載だった。

旭川市に隣接する上川管内東川町では、芦野組(同)が町の分譲地「ノースヴィレッジ」に建築中の2戸の現場を訪問。ノースヴィレッジは68区画の新しい分譲地で、建築中のものや完成したばかりの戸建が多数並び、参加者の興味を引いていた。
続いて、北の住まい建築研究社(東川町)が手掛けたソックス専門店「YAMAtune(ヤマチューン)」のショップとカフェ、同社が所有する森林の一角を施主に分譲した土地に建築中の別荘を訪問した。

講師を務めた渡邊氏

2日目は旭川市内のホテルで勉強会を開催。北の住まい建築研究社の渡邊恭延社長が、「木の性質」をテーマに講演した。
同社は、東川町の森に工房を構え、北の住まい設計社として無垢材と手仕事による家具を製作。家づくりにおいても自然素材にこだわり、設計から材料の加工、施工まで一貫して行っている。

渡邊氏は、「メインで使っている樹種は広葉樹のミズナラ」と話し、「北海道が誇る木材だと思う」と強調した。特長として、成長が遅い方で年輪があまり大きくなく、木目がきれいと解説。色合いも落ち着いた雰囲気に仕上がる。
また、木を使う上で大事なのはゆっくりと乾燥させることで、そのために木材を寝かせる期間を「熟成期間」と呼んだ。自社の倉庫で平均6、7年は寝かせていると言い、その期間が長いほど収縮や引っ張りなどの木の応力が抜けて、「癖が取れる」と語った。

道産広葉樹を専門に取り扱う鈴木木材(檜山管内厚沢部町)と契約し、その年に切り出された丸太の製材を毎年購入してストックする。中には10年以上熟成させているものもあるという。
「木を尊敬している」と語る渡邊氏は、これまで手掛けた家具や建物のエピソードを披露した。立教大で食堂を改装する際に行われた家具のコンペティションでは、「定期的に木の椅子を修繕する」ことを提案し、採用された。30年ほど前の話だが、今でも職人が手入れに赴いているそうだ。
前日の見学会にあったYAMAtuneのショップについても解説。外壁は道南杉を用い、天然成分の防腐塗料を塗布している。内装も家具も道産材で、すべて自社加工で製作。メインカウンターには東川町で採取される石を使った。
また、森の中の別荘については、一つ一つの家具のディテールまで施主と対話を繰り返し、何度も提案したというCGパースを紹介した。
渡邊氏は木だけでなく、できるだけ天然のものを用いることを大切にしていて、「土に帰る」素材への思いを示した。