元気な工務店

大工を「選ばれる職業」へ

ネオス建築は、大工職人の佐藤祐樹氏が創業し、新築からリフォーム、オーダー家具まで取り扱うものづくりの会社。大工を正社員雇用し、営業、設計、施工、監理を一貫して自社で行っている。顧客にとって「誰と建てるか」が家づくりの決め手になるように、「人」をテーマにしたYouTubeチャンネルをこのほど開設。さらに、大工が身近になるイベントなどを通じて、大工や職人の地位向上に取り組んでいる。次世代の建設業のモデルになることを目指しているという佐藤社長に話を聞いた。

大工の雇用安定を

「大工に憧れたのは中学生の頃。大工になって現場に出ていた先輩が、とにかくかっこよく見えた」。佐藤氏はそう振り返る。高校は普通科だったが、卒業後はぶれることなく道内のハウスメーカーに大工職で入社。その後、本格的な木造建築の修行を求めて札幌市内の工務店に移り、専属大工として6年間の経験を積んだ。

2009年にネオス建築を創業し、独立を果たす。「決して景気の良い時期ではなかった」と語るが、だからこそ、自ら仕事を作り出す覚悟が固まったという。折しも全道の新設住宅着工戸数が前年比3割減となった建築不況の真っ只中だった。 一人で立ち上げた会社に、ほどなく同世代の20代の大工3人が加わった。佐藤氏は、全員を当時としては珍しかった通年雇用の社員大工とした。「僕自身が大工だったから、職人が安心して長く働ける環境にしたかった」と話す。3人は今も在籍し、会社を支えている。

当初から仕事は順調で、冬期間も途切れなかった。人とのつながりを大事にし、「人脈のおかげ」とうなずく。2年目には、仕事の空いた時でも大工職人の手を止めないようにと家具事業部を新設し、家具や雑貨の製作を始めた。そのための工場を作り、事務所内に展示スペースを設置。建具やオーダー家具による、空間コーディネートも提案するようになった。「できるだけ自分たちで作るのが基本」と職人の矜持を示す。

 

技術を継承する社員大工たち

誰が建てるか発信

佐藤氏は、この7月から公式YouTubeチャンネル「ネオTV」をスタートした。「タダでできるテレビ局」と呼び、社員一丸となって企画制作にあたっている。この中で、同社の家づくりに携わっている人たちを佐藤氏との対談形式などで紹介していくという。

SNSが普及し、家の性能やデザインについて誰でも簡単に調べられるようになった。今やどの建築会社も同じような住宅を作れる時代だ。「だからこそ、誰と建てるかが大事になると思う」と話し、動画を通して「顔の見える家づくり」を目指す。 出演者は同社のスタッフから、基礎、電気、設備、内装などの協力業者まで多岐にわたる。「この家は誰が建てているのか」を知ってもらうことで信頼を醸成し、選ばれる工務店になる。

若年層への大工職のアピールも目的の一つ。「大工の仕事」を見てもらうのに動画はうってつけだ。同社は実際に若手の採用を試みている。ただし、これまでは入社しても定着せず、3年未満で辞めてしまうケースが多かった。 そこで、1年から3年目まで段階的に育成するカリキュラムの整備に着手した。個人差はあっても1年目はここまでできたら大丈夫といった目安を作り、自分は今どのあたりにいるのかもわかりやすく示してあげられるものにする。「若い世代に対し、育てる側も統一した意識を持つことが必要」と佐藤氏は語る。

 

YouTubeチャンネルを開設

社会的地位向上へ

「かっこいいから」と大工になった佐藤氏だが、今は「社会貢献」の役割がモチベーションとして大きくなっているという。大工は衣食住の「住」に携わり、震災の時にも必要とされる。今後、職人不足がますます進む中で、「社会的地位の向上」が不可欠と思っている。

佐藤氏が考える社会的地位は、年収だけの話ではない。「子どもが大工になりたいと言った時に、大丈夫?と心配されるのが現状。そうでなく、いいね、頑張れ、大工はいいぞと言われるようになった時に初めて、社会的地位が向上したといえる」と強調する。

大工離れの背景には、子どもたちが工事現場に触れる機会が激減していることがある。佐藤氏は、「僕自身、子どもの頃に工事現場を見たことがなかった。今はさらにネットで覆われ、閉鎖的になっている」と指摘する。 そのため、子どものための工作イベントを行うなど、大工と触れ合う機会を設けることに取り組んでいる。将来的に現場の「子ども見学会」も企画している。

佐藤氏は、「自分の会社や、今、同じように職人の地位向上の取り組みをしている会社が存続しているうちに、社会を変えていくのは時間的に厳しいかもしれない」と述べ、「いずれ、こういう会社があったから、うちもやってみようと言われるような、将来のモデルになることを続けていきたい」と力を込めた。

 

大工が建てる木の家