元気な工務店

実績伸ばすエコハウスゼロで大賞

(一財)日本地域開発センターが省エネ性能に優れた住宅を表彰する「ハウス・オブ・ザ・イヤー・イン・エナジー2021」で、住まいのウチイケ(室蘭市)のZEH仕様住宅「eco―house ZeRo(エコハウスゼロ)」が最高賞の大賞に選ばれた。同社は18年にも標準仕様の「eco―house standard(エコハウススタンダード)」で大賞を受賞しており、3年ぶり2度目の栄冠となった。
建物の躯体と設備機器を一体として省エネ性能を評価する表彰制度で、住宅の省エネ性能向上と高性能住宅の普及を目的に毎年行われている。21年度は全国から265件の応募があり、そのうち3件が大賞に選ばれた。
省エネ基準に基づく外皮・設備の省エネ性能値のほか、数値での評価が難しい省エネ化の技術や手法も総合的に評価する。また、供給戸数や価格、情報発信など省エネ住宅の普及に対する貢献度も評価の対象となる。

 

エコハウスを普及

同社のエコハウスゼロはUA値0.15W/㎡Kの高断熱仕様の外皮に太陽光発電を組み合わせ、40坪以内の住宅なら発電容量6kW以内でZEHの要件を満たす。
外皮の基本仕様は、軸間に高性能グラスウール105㎜、熱伝導率0.018W/mKの高性能フェノールフォーム断熱材を壁の付加断熱に120㎜、屋根断熱に180㎜(天井断熱の場合は吹き込みグラスウール550㎜)、基礎断熱はビーズ法ポリスチレンフォーム断熱材を外側に120㎜、内側に100㎜。窓はUw値0.68W/㎡Kのトリプルガラス樹脂サッシを採用している。
換気は第一種熱交換換気、暖房はエアコンまたはエコジョーズ、給湯はエコキュートかエコジョーズが標準。太陽光発電は外皮性能や一次エネルギー消費量の詳細な計算に基づいて最適な容量を選択する。
同社商品開発企画室の成田智昭室長は「簡易計算だと過剰にコストが掛かってしまうので、必要な数値を正確に求めることが重要」と強調する。
床面積を小さく納め、規格化でコストダウンすれば2500万円以内でエコハウスゼロを提供することも可能だという。
同社は25年度までにZEH化率75%を目標に掲げており、カーボンニュートラルと今回のハウス・オブ・ザ・イヤー・イン・エナジー大賞受賞を追い風に、エコハウスゼロのさらなる普及を目指す。

 

バーチャル展示場HOUPARKに出展中のVRモデルハウス

性能の追求と受賞への歩み

【インタビュー】内池秀光社長に聞く

2000年に国の住宅性能表示制度が始まったのがきっかけで、高性能な省エネ住宅の路線を歩み始めた。当時まだスタートしたばかりの会社で、一から信用を築きながら他社と差別化を図っていくために国の制度をいち早く取り入れていこうと考えた。
表示する以上はやはりできるだけ良い性能を見てもらいたいと思い、制度上の最高等級を標準仕様としたのがそもそもの始まり。本社の隣に性能表示のモデルハウスを建て、当時、メディアでもかなり取り上げていただいた。
ただ、そのころはまだ世間で省エネ住宅がほとんど認知されておらず、「一部の富裕層がステータスとして建てる環境に優しい家」という程度のイメージでしかなかったから、販売面では苦労した。壁の中の断熱仕様は目に見えないので、お客様へのPRが難しい。
それで9年前からハウス・オブ・ザ・イヤー・イン・エナジーに応募し、受賞を目指すようになった。権威のある第三者機関からお墨付きをもらうことで、大きな武器になるのではないかと考えた。

二つの仕様で日本一

ハウス・オブ・ザ・イヤー・イン・エナジーには三つの評価基準があり、単純に性能値を上げるだけでは大賞はもらえない。性能値だけでは測れない部分で、例えば日射熱取得を考えた窓の取り付け位置など、敷地に合わせた設計上の工夫も評価対象に含まれる。
省エネ住宅普及の取組みも求められるため、モデルハウスでデータを取って研究したり、コロナ禍以前は一般ユーザー向けにセミナーを開いたり、常に何ができるか考えてきた。
そうした取組みが実を結び、3年前にようやく大賞をいただくことができた。その年の実績ではエコハウスゼロが3棟で、標準仕様のスタンダードが40棟だったので、普及に貢献したという意味でスタンダードが受賞したが、弊社としてはより高性能なエコハウスゼロを評価してほしい思いも強かった。
今年(決算基準、21年6月~22年5月)の実績は、3月末までの受注分でエコハウスゼロが15~20棟と全体の7割近くに達する。3年間で非常に数字が伸びたこともあり、今回、念願だったエコハウスゼロの大賞受賞が叶った。
弊社の住宅の仕様はスタンダードとゼロの二つしかないので、これで建てる住宅すべてが「省エネ日本一」のお墨付きをいただいたと思っている。

苫小牧常設モデルハウス

省エネ住宅に追い風

今は脱炭素やSDGsが注目され、省エネ住宅の作り手にとって本当に追い風が吹いている。また、エネルギー価格がどんどん高くなる一方で、省エネ住宅を作るためのコストは下がってきているため、収支が合うようになってきたことも大きい。
世の中が省エネ住宅を求めるようになったのに対し、高いレベルでニーズに応えられるビルダーはまだ少ない。弊社を選んでいただくお客様にとっては、そこが大きなポイントなのではないか。
最初の建設費が高くなっても、長い目で見て間違いなく建て主の得になるのがZEH。しかし、一番大事な中身のコストを抑え、見た目が良くて安い家を建てる方が一般ユーザーにとって分かりやすく、売りやすい。
では自分の家を建てる時はどうか。見えない部分でコストをうまく抑えようとするだろうか。それが弊社の家づくりの根本精神。自分が住みたい家だからZEHを勧めている。今、長期優良住宅でZEHの物件が何件かあって、計算するとLCCMになる見込み。それができればエコハウスゼロの上にもう一つLCCMのモデルを作って、2年連続3度目の大賞を狙いたい。
エコハウスゼロは太陽光発電の容量が5~6kWでもZEHの要件を満たすので、お客様の費用を考えて必要以上に大きな容量は載せていないが、LCCMだと9~10kWは必要になる。お客様が自費で設備を購入するのは大変だが、初期費用無料の太陽光発電設置サービスを活用することでLCCMも可能になる。
ハウス・オブ・ザ・イヤー・イン・エナジーは省エネ住宅普及の目的を一定程度達成したということで、22年度を最後に制度が終了する。最後に連続受賞の快挙を達成出来たら最高だと思う。

 

ZEH仕様で快適な室内空間