元気な工務店

家族の日常から家を作る

T-meis(ティーメイス)は2014年に設立。代表取締役の本間智代里氏は、長らく地元帯広市の工務店に務めた経験があり、設計から現場管理、営業まで手掛ける。「人と環境にやさしく」をベースに地域材や漆喰などの自然素材を用い、自身の経験にも裏打ちされたエコで快適な住宅を提供している。大工と一緒に現場作業を行うことも楽しいという本間氏に、顧客に寄り添う家づくりについて聞いた。

施主の日常を描く

施主との最初のヒアリングでは、一日の過ごし方をできるだけ詳細に話してもらう。すると、本人も気づいていなかったその人なりの日常が現れてくる。ティーメイスの家づくりは、そこから始まる。

「以前、旦那さんがキッチンによく立つというご夫婦がいて。料理をするのはどちらか、聞かないままだったら普通のキッチンになってしまうんですけど」と本間氏。二人で作業するのに快適な大きさや配置を提案できたという。

自身の経験から家事動線にはとくに気を配る。ファミリークローゼットという言葉が定着する前から、子育て世帯の家の中心に大きなクローゼットを設けていたとも。「各部屋にクローゼットは必要ないのではと思っていた」と振り返る。

また、仕事で忙しいと洗濯物が干しっぱなしになり、そこから着ることも多くなる。そんな体験を施主に話すと「うちも同じ」と返ってきた。そこでランドリーとクローゼットを一緒にするアイデアが生まれた。

ここ数年は住宅価格の高騰や家族構成の変化から、十勝エリアでも小さな家のニーズが増えている。本間氏は、「30坪以下で、小さいけれども豊かに暮らせる家づくりに目を向けたい」と話す。

太陽光と薪ストーブ

太陽光発電に関心の高い顧客も多くなってきたという。本間氏は、「自然エネルギーの活用は必要」と考えている。11年前に新築した自宅にも太陽光発電システムを設置した。停電時に役に立ったこともあり、災害に強く、昨今の電気料金高騰にも対応できる。

ただ、売電価格が下がり続け、蓄電池がまだ高価なため自信を持ってメリットがあるといえないところがある。廃棄時の環境負荷もある。そうした課題がクリアになれば積極的に提案していきたいスタンスだ。

一方、薪ストーブは薦めていて、多くの施主が採用しているそうだ。自宅にも設置しており、「薪ストーブは心の豊かさ」と強調する。カーボンニュートラルで環境に優しいこともあるが、火の暖かさは癒しになる。家族が周りに集まり、団らんも育まれる。

本間氏の自宅は、当時、エコロジー住宅の先端だった「北方型住宅ECO」のモデル事業に採択された建物。「人と環境にやさしく」が一貫したテーマだ。 自然素材もできるだけ取り入れるようにしている。9月に完成した子育て世帯の新築住宅も、外観はカラマツと漆喰、内装は無垢フローリングで仕上げた。

 

現場から営業まで

本間氏が建築に興味を持ったのは、小学生の時に実家を新築したことがきっかけだった。何もないところから家が出来上がっていくことに子どもながらに感動したという。電気のスイッチがない昔ながらの住宅に住んでいたため、新しい家でスイッチを押すと照明が点いたことに驚いた。

「すごい、おもしろいと思った」。思いは残り、進路に工業高校の建築課を選んだ。 卒業後は地元の工務店に就職し、一年後にホーム創建(帯広市)に転職した。当時、創業したばかりで社長夫妻のほか従業員は本間氏だけだったそうだ。そのため最初から現場に出された。

大工に交じり、基礎から一通りの施工を修得。そのうち現場管理をしながら設計も手がけるようになった。二級建築士の資格を取得し、顧客との打ち合わせも任せられた。 会社が大きくなり社員が増えるにつれ、管理職と営業もこなした。「家づくりの一連の流れをすべて身に付けることができた」と本間氏。満を持して2014年に独立し、ティーメイスを創業した。

チームとしてやる

現在、社員を二人抱え、年間5棟ほどの住宅や店舗を建てている。信頼できる大工とタッグを組み、自ら現場仕事をすることもある。独立したのも「現場に戻りたかった」のが大きな理由だった。

次の目標は会社の体制を整えるため、社員を増やすこと。5人くらいで、お互いに目が届き、一人ひとりの責任感もほどよい規模にしたいという。施主のアフターまでしっかりとサポートできるように、「チームとして一組のお客様にみんなで携わっていけるようにしたい」と先を見つめている。