元気な工務店

職人を地域で補い合えるように

自社工場でBtoBに取り組む

佐藤工務店(美唄市)は土地探しから施工まで自社一貫体制で家づくりを行い、自社のプレカット工場も持っている。工場で製造した部材は、今後、地域ビルダーへ供給していくという。そこには、住宅業界が抱える深刻な人手不足と高齢化に対し、地域工務店として一歩一歩できることをやっていきたいという思いがある。二代目として将来を見据える佐藤隆行取締役室長に話を聞いた。

工場も構造計算も

佐藤工務店の創業は1978年。佐藤氏の父で現社長の佐藤勇治氏が起こし、早くから空知エリアで2×4住宅を手掛けてきた。木造住宅の根幹にあるのは木材加工だから、その品質を保証するため、25年以上前からプレカット工場を自社で保有している。3年前に工場を刷新し、キャパシティを広げた。

パネルの製作まで工場で行い、マルチフレーミング工法というシステム化したラインにより、0.1㎜単位で加工した高精度な構造パネルができる。現場での作業が減るので、施工時の大工の負担が軽くなり、工期の短縮にもつながる。

大工は現在15人ほど在籍している。創業当時から社員雇用を実現してきた。「クオリティの高い構造材を用いて、自社大工により責任を持って施工する。徹底的な品質管理を行っている」と佐藤氏。設計、施工、営業、不動産まで、自社で一貫していることが強みだ。

構造計算も外部に委託することなく社内で行うため、スピーディーな提案が可能という。ウッドショックで梁材が入りづらくなった時は、大きな梁を極力使わない構造を考えた。そうした工夫も臨機応変にできる。

一級建築士の資格を持つ佐藤氏は、大学で地盤の杭を研究課題にしたそうだ。「構造計算のように数字がはっきりしている仕事が好き」と言い、その学びが会社で生かされている。4号特例の縮小が間近に迫っているが、さらに構造計算が大事になると考え、「しっかりとした家を作ることを大切にしている」と話す。

 

自社大工で建てる2×4住宅

全部門で目標発表

次期社長として取り組みたいことに、「大工のプライベート時間の充実」を挙げる。これまでがむしゃらに働いてきた大工がもっと自分のために時間を割き、余裕を持ちながら仕事ができる、そんな組織や勤務体制づくりを進めていく。目標は、「大工の若者たちが入ってくる会社」だ。
大工だけでなく他の社員の働きやすさも考え、意識してコミュニケーションを図っている。佐藤工務店は毎年、年度末の3月に経営方針発表会を行っており、その際に全ての部署が前期の反省点と改善点を発表し、それを踏まえた新しい目標を掲げる。自分たちで考え、取り組むことで、やりがいがまったく違ってくるという。

今年度の大きな取組みは、美唄市内に常設のモデルハウスを作ることだ。来春のオープンを目指し、プラン作りをスタートした。顧客のニーズを捉え、デザインや必要な性能を検討。災害に対応できるように、発電機能や暖房システムなどを見直し、提案することも考えている。

 

収納豊富でゆとりあるLDK

建具や部材を受注

住宅業界全体の課題である職人不足に対して、まず自社でできることから始めている。4月から建具部門を新設した。美唄市に建具職人がいなくなったためで、「他の工務店からの注文も受け、地域で補い合っていければ」と話す。

また、自社工場のプレカット部材を地域のビルダーに供給することも検討している。長期的にはトラスやCLTの製造に取り組むことも展望する。
「地域の家づくりを絶やさないように、貢献できることがあればやっていきたい」と、地域工務店としての責務を担っていく。

 

自社のプレカット工場