元気な工務店

脱・工務店の新たな挑戦

旭川市の工務店、東陽APの沼倉寿和社長が新会社LINK AP(リンクエーピー)を設立し、工務店の枠を越えた挑戦を始めている。建築資材の高騰や建築関連の法改正による規制強化など、住宅業界を取り巻く環境は逆風が続く。しかし、「ナンバーワンではなくオンリーワンを目指す」との信念のもと、全道展開に向けた新規事業を次々と打ち出している。その展開について沼倉氏に話を聞いた。

X線での基礎調査

東陽APは2009年の設立以来、リノベーションに力を入れてきた工務店だ。だが、4月の建築関連改正法の施行により、大規模の修繕や模様替えも確認申請が義務化され、リノベ市場は転換期を迎えている。基礎コンクリートの強度検査が必要になり、とくに現行耐震基準ができた2000年以前の住宅は、基礎補強が必要になるケースが増えるといわれている。 「フルリノベのハードルが高くなった」と見る向きが多い中、沼倉氏は「逆境を逆手に取った新事業を考えた」という。

目を付けたのは、主にゼネコンが使うX線検査装置。基礎内部の鉄筋の太さや形状まで可視化できるため、従来の超音波検査では不可能だった精査が可能になる。 「2000年以前の基礎でも、きちんと調べれば現行基準に適合するものもある」と話し、「基礎の状態がわかれば工事について適切に説明でき、フルリノベや部分リフォームなど顧客が安心して選択できるようになる」と強調する。

この事業を推進するため、沼倉氏は自らX線作業主任者の国家資格を取得した。東陽APのリノベーションで全棟必須にする他、別会社であるLINK APが窓口になり、一般の工務店からの依頼も受ける。また、不動産会社に対し、住宅査定に取り入れるよう働きかけるなど事業領域の拡大も図っている。 「これまではリノベで道内ナンバーワンを目指してきたが、次はオンリーワンになる」と、沼倉氏は自信をみせた。

省エネと創エネを

LINK APは、東陽APとの資本提携がなく建設業も掲げていない。そこには、「なんでもできる会社にしたい」という沼倉氏の思いがある。 数あるアイデアのうち、まず主体とするのは「テラノ ペイント」と「HESTAソーラー」の2本柱だ。どちらも道内唯一の販売施工代理店として取り扱いを開始している。

テラノ ペイントは、テラノテクノロジー(浜松市)が製造するエアコン室外機専用の遮熱塗料。室外機に塗るだけで空調機器の消費電力を抑えられる。施工しなかった場合に比べ、1日当たり約40%削減できた事例もある。10年保証が付き、道内ではすでにコンビニエンスストアなどで採用された。道外の自治体で補助金事業の対象に指定された例もあり、今後は「道内の自治体にもアピールしたい」と意気込む。

HESTAソーラーは、HESTA大倉(東京都)が開発したペロブスカイト型の太陽光発電パネル。薄くて軽く、曲げられるので、壁面や湾曲した面でも設置できる。沼倉氏は「旭川のような豪雪地帯でも壁面なら発電しやすい。しかも雪の反射で効率が落ちない」と言い、道内での普及を進める。 さらに企業に対して、HESTAソーラーをリースする仕組みを構築した。

リースを利用し、テラノ ペイントとセットで導入したところ、電気料金の大幅な削減につながった企業がある。 個人住宅に対しても、テラノ ペイント塗装済みのエアコン室外機とHESTAソーラーを組み合わせるなど、オリジナルシステムの開発を進めていると明かす。

「2050年のカーボンニュートラルを考えるなら、省エネと創エネの両輪が必要」と沼倉氏。ユーザーにとっては、やはりCO2排出量より、光熱費が幾らになるかが大事なポイント。目標としているのは「年間10万円以下の光熱費」で、旭川エリアで実績を作れば道内に波及すると見込む。 今後、テラノ ペイントもHESTAソーラーも、道内全域に施工店のネットワークを作る予定だ。

 

曲げられるHESTAソーラー

ビジネスは仲間と

LINK APの事務所がある建物は、「地域密着型コミュニティ広場」として誰にでも無料開放する。もともとは自動車整備工場だった場所で、半年以上かけて倉庫のリノベーションを行った。8月末に完成し、9月13日から3日間、オープニングイベントを開催する。

ここでは、クラフト作家が作品を発表したり、ワークショップを行ったり、人々が自然に集まる場所にする。そこから異業種との連携や、同じ方向を向く仲間とのつながりが育まれていく。 「これからの時代は、自社だけがもうかればいいとは思えない。仲間と一緒にネットワークを広げることが新しいグループ経営」と沼倉社長は笑って言い切った。

 

「地域密着型コミュニティ広場」をオープン