住まいの話題

北の住まい設計社 テレワーク小屋「Nest」

家具製造を手がける北の住まい設計社(東川町、渡邊恭延社長)は、テレワークに特化したスペースとして延床面積10.78㎡の小屋「Nest(ネスト)」を建てた。トイレやベッド、シャワールームも完備し仕事に集中できる生活環境を提供する。施工は全て同社の家具職人が担当。今後、量産モデルとして商品化し、道内で販売する。コロナ禍のなかで小屋を建てたきっかけや家具職人に施工を任せた理由を渡邊恭延社長と設計担当の秦野誠治氏に聞いた。

 

小屋について語る渡邊社長

生活ができる環境

「ネスト」の計画がスタートしたのは今年の1月ごろ。きっかけは渡邊社長が顧客の家に訪問した際に気づいた「生活音や声」だった。コロナ禍により在宅ワークが普及する中、書斎をテレワークスペースにしても家族の生活音や声は遮れない。「生活する人と仕事する人のお互いが気を使う。であれば母屋とは別棟にするという考え方に達した」と渡邊社長は語る。

テレワークの最中に湯を沸かしてお茶を飲む、またトイレを使う場合も一度「家庭」に戻る必要がある。そのため小屋は「仕事に集中できることを第一に考え、その上で快適性も重視した」と話すのは設計を担当した秦野氏。部屋の中にはベッドやシャワールーム、トイレを備え、生活ができる環境を整えている。

仕様は住宅建築を手がけるグループ会社の北の住まい建築研究社(東川町、渡邊恭延社長)が施工する住宅とほぼ変わらない。断熱は壁と天井にロックウール200㎜を吹き込み、サッシはトリプルガラス、暖房はエアコン1台で行う。ただの「箱」ではなく、北海道の冬にも対応できる仕様だ。木材も全て道産材を使い、外壁には北の住まい建築研究社が手がける住宅のアイデンティティである「道南スギ」を使用している。

 

サッシはトリプル 暖房はエアコン1台

1㎜差が気になる

今回、施工したのは全て家具職人。家具は0.1㎜単位の精度で製作するため、建築製材では当たり前の1㎜の差も気にかけている。「大工職人には真似できないような、きれいな仕上がり」と秦野氏。洗面台などの家具も全て家具職人が製作し、細部までこだわった。

今回、なぜ家具職人を起用したのか。キーワードは「新たな家具への挑戦」だ。渡邊社長が明かす。「職人さんに小屋を作ってもらいながら、新たな家具やこれまでと違う形にチャレンジしてもらいたい」

 

テレワークに特化した部屋

本州から見学客も

大雪山の麓にある東川町は自然豊かで、旭川空港までは車で約20分。移住者を積極的に支援しており、今年2月時点の人口は8445人。この10年で533人増えている。北の住まい建築研究社で家を建てる顧客には移住者も多く、「ネスト」の見学には札幌市や富良野市のほか、東京都や富山県からも来客があるという。

今後は、量産モデルの「ネスト」をまず道内で販売する。自社工場で軸組を作り、顧客の希望する敷地にトレーラーで輸送。布基礎と電気、設備工事のみ顧客に手配してもらい、基礎の上に設置する。テレワーク以外の「ゲストルーム」などの用途にも対応可能だ。1棟の価格(税別)は685万円。

同社はテレワークスペースへの需要はより高まると予測し、今後もクオリティの高い商品を提供していく意向だ。